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荻野文子(予備校講師) 勉強に苦しむ気持ちやつまずく場所がわかる

 有名講師による映像授業で学ぶ予備校「東進ハイスクール」(本部・東京)の講師として、1989年から古文を教える。少し鼻にかかった甘い声で、古文の受験勉強のツボを押さえていく。まっすぐな視線、整理された板書、明快な説明。「マドンナ」の愛称で親しまれる荻野さんの授業は、受講生の視線を引きつけて離さない。
 衛星放送による映像授業を荻野さんが提案し1991年に始めました。授業はDVDやインターネットでも見られます。荻野さんは「田舎の受験生も一流の講義を受けられる機会を与えたかった」と言う。兵庫県内の公立高校を出て、東京で浪人生活をしていた時、地方と都会の情報量の差にがく然としたからだ。
 荻野さんの授業はわかりやすいだけではない。過去20年の有名大学入試問題の分析に裏打ちされた授業は「実戦に直結する」と好評で、全国の60直営校、800加盟校で年間1万人以上が受講する。
 荻野さんは20年前、結婚後に住み始めた大阪の小さな予備校で講師の仕事を始めた。一生けん命ついてくる受講生を見て、教えることのすばらしさに目覚めた。「最初はバイト気分だったのに。のめり込むタイプなんです。ふふふ」と荻野さんは優雅に笑うが、相当の職人肌だ。
 受講生を引きつける技を盗もうと、大阪では、落語や独り芝居に通い、穴あき包丁の実演販売を何時間も観察した。包丁の実演販売を見て「緩急自在な構成の中で、客の疑問に答え、実際にやらせてみて喜ばせる。人間の心理を揺さぶる巧みな演出に『これだ!』と思いましたね」
 「それで授業の見せ方も私は神経を使います。
鏡の前で授業をして自分の動きをチェックする通しげいこもします。変な動きをしている自分の姿を見ると恥ずかしいが、自分の授業を直視することは大切です。教師は
ドラマの脚本家、演出家、そして役者。すべてを兼ねているようなものです」と言う。
 「受講生の100人中98人は古典がきらいな状態で来ます。だから、
素朴な疑問を大切にして、興味を引きつけるようにします。そのためには、子どもに好奇心を持っていないと、発想は生まれません。家で疲れてテレビ番組や歌謡曲、CMなどを見ていても何か使えるものはないかと考え、絶えずアンテナを張り巡らせています。どうすればみんなが興味を持ち納得するかを考えます。当然、私自身が元気でないといけません。古典が
わかった時の受講生の爆発的なエネルギーはすごいんです。私自身は暗記が苦手で英語で苦労した経験があり、勉強に苦しむ気持ちやつまずく場所がわかることが、教え方につながっているかもしれません」と荻野さんは言う。

「教育ルネサンス 教師力」読売新聞教育取材班著 中央公論社 2006
(荻野文子:兵庫県生まれ 代々木ゼミナールなどを経て、東進ハイスクール客員講師のほか、進学塾主宰)

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