話すことは教育にとって最も重要な手段である
ことばは認識・思考・伝達・社交・調整機能の役割がある。
話すことは、あらゆる日常生活でも欠くことができないが、教育という営みの中では一層欠くことができない。話すことを取り去った教育というのはまず成り立たない。最も重要な教育手段である。
教師は話し方ということについて、もっと関心を高めていく必要がある。そしてより高い「話し方の技術」を身につける必要がある。それによってもたらされる教育上の効果は図り知れないものがある。
「話し方の技術を高める」ということは決して教師のテクニックを器用にすることではない。話術を高めるということは、実は子どもの教育にどうかかわるかということであり、子どもの認識や思考をいかに高めるかということであり、適切な伝達をどうすればよいかを考えることでもある。
これらは、言ってみれば教師としての基礎教養に関することがらであり、子どもたちにどのような教育をなすかという重大な問題でもあるということができる。
授業は話し方の如何によって、わかったりわからなかったりする。また、楽しく学べたり、つまらなくなったりもする。話し方の技術が低い場合には子どもはすぐによそ見をしたり、隣とおしゃべりをしたり、手いじりをしたりという行動にでるのが子どもの特徴である。子どもは教師の話し方に対して敏感に反応する。
話のじょうずな教師は子どもに好かれ、授業は楽しく進行する。子どもたちの表情は生き生きとして意欲にあふれた学習をしている。
反対に話し方の技術の低い教師の教室では、子どもたちの学習意欲はおおかたは低く、授業に集中している子は至って少ない。大多数の子どもは無表情で退屈に耐えている。休み時間になると待ってましたとばかりに外に飛び出していくが、授業のチャイムが鳴るとけだるい表情でのろのろと教室に入ってくる。
話し方の技術の高さ低さが、きわめて直接的に子どもの学習や生活の張りを左右するのが小学校である。小学校の教師は、中学や高校の教師にくらべてよりいっそう話し方の技術を高める努力が必要になってくるはずだ。
(野口芳宏:1936年生まれ、元小学校校長、大学名誉教授、千葉県教育委員、授業道場野口塾等主宰)
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