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プロ教師の叱り方

 人間は自由にノビノビさせておいて、自然に一人前になれるわけではない。赤ん坊のときから、この社会で生きていけるように、親が生活の仕方、人とのつきあい方、基本的な知識をきちんとたたき込むことが必要なのだ。
 しかし、子どもにとってそれは、自らの欲求に根ざしたことではないから、いやがるのはあたりまえで、それにひるんでいては、子どもはいつまでたっても一人前にはなれないのだ。
 とすると、教育とは、まずおしつけであると覚悟しなくてはならないのだ。だから、大人・親・教師と子どもが同じ人間である、などと言っていたら、とてもできやしないことなのだ。
 子どもがいやだといっても、断固おしつけることが基本的に必要で、時には親は、子どもに体罰を加えることだって必要なわけだ。
 しかし、おしつけだけで子どもは育つわけはない。子どもが自由に遊ぶ空間を保障し、そのなかで、自分で考え、行動し、責任をとるという自治の訓練が行われる必要がある。
 しかし、この自治の訓練にしても、大人の考える大わくを越えたときは、叱って中に入れる必要があり、子どもを一人前にするには、叱ることが必要不可欠であるということなのだ。
 叱って育てる教育は必要不可欠であるにもかかわらず、戦後の日本の社会はそれを軽視し、子どもはほとんど教育されずに、欲望のみ肥大化させている状況にある。「叱る教育の復権」には、つぎのような覚悟と戦略が必要なのだ。
(1)
学校の大わくをしっかり固める
 学校は子どもに、基礎的学力、生活の仕方、人とのつきあい方を身につけさせ、一人前の国民にする所で、子どもはそのために来ているのだ、ということを、子どもにハッキリと示す必要がある。
 おしつける所と、子どもが大わくのなかで、自由に活動する所をハッキリわけて子どもに示すことが大切なのだ。教師のなかに、この点についての共通認識をつくることが出発点である。
(2)
教師-生徒の関係をハッキリさせる
 教え-教えられる(子どもが教師の言うことをきく)という関係が成立しなければ何も始まらない。この根本が現在くずれているのである。
 子どもとの距離をとり、クールに子どもに接することを基本とすべきだ。
 やさしい、ものわかりのよい教師など論外だ。べたべたと子どもにくっついていたら、叱ることなどできはしない。
(3)
みんなで同じように叱る
 家庭でもほとんど叱られたことがない子どもが相手である。教師たちが共通の原理をハッキリ示して、同じような場面で、教師がみんな同じように叱ることが大切だ。教師がバラバラでは叱ることなど無理である。
(4)
秩序を叱る
 学校の役割・目的に関することである。授業をしっかり受ける。掃除をしっかりやる等である。クールに、ていねいな言葉でハッキリ叱ることが大切だ。
 ヒステリックに叱ったり、説得しようと理由を並べたてるのが最も悪い。それに違反したからといって、人間として悪いということではない。
 教師はこの区別をきちんとしていない。ここが落とし穴である。
(5)
道徳を叱る
 人間の生き方にかかわること(道徳)である。人と人とのつきあい方について、叱らねばならないことがでてくる。いじめについてもこの分野に関することである。
 しかし、これは子どもと人間として向き合うことになり、難しい。叱る教師の人間が試されるからである。つまり、権威がなければ無理なのだ。教師は自分の人間の大きさをじゅうぶんに自覚したうえでしからねばならない。
(6)
差別をするな
 子どもはえこひきを最もいやがる。子どもがなかなか言うことをきかないので、すべての子どもに対して、同じように叱るのはエネルギーと根気がいる。
(7)
叱るということと、言うことをきかせることは別
 これをゴッチャにしている教師が非常に多い。
 叱るとは、学校としてのサインをハッキリだすということである。サインをだし続けることに徹する必要がある。
 言うことをきかせるためには、ある種の力が必要なのだ。言うことをきかせようとしたら、権威というものが必要である。
(8)
権威をつくる
 教師に対する子どもの信頼が権威のよりどころである。教師としての仕事をハッキリさせ、それを誠実に実行していくことが大切だ。
 権威は、親や地域社会の支持が不可欠である。子どもの危機的な現状を率直に親にぶっつけ、親と手を結んで子どもを育てるという方向が必要だ。
 以上の原則をもとに、学校の現状を冷静に把握し、自分としての戦略を立ててみよう。そのうえで、具体的な場面でどのような叱り方をすべきかを考えるのだが、これは個々の教師が、その場その場で生みだすしかなく、マニュアルに頼るなどできることではない。
(
 河上亮一:1943年東京都生まれ、埼玉県公立中学校教諭、教育改革国民会議委員、日本教育大学院教授を経て、埼玉県鶴ケ島市教育委員会教育長、プロ教師の会主宰)

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