社会科:子どもを歴史のその場に立たせる(開国の授業)
授業というのは教師が子どもの意識の中に問題を設定することから始まります。その問題を子どもが追いかけ、取り組むのを助けるのが教師の仕事だと、林竹二は考えています。林は「開国」の授業の例をつぎのように述べています。
「開国」の場合は、阿部正弘(幕末期の老中で幕府の舵取りを行った)が立たされたその場に、子どもを同じように立たせることによって、開国の際に、阿部正弘に課せられた課題の困難さ、重大さを考えさせなければ、阿部正弘の決断の意味、阿部正弘のやった仕事の歴史的な意味というものは、つかめないわけです。そのためには、二時間の授業のうちの一時間を、その準備として、子どもたちを歴史的状況の中に立たせる作業にあてるわけです。
当然、林の言葉は多くなる。それは教えるためではない。その作業を通じて、二時間目が始まって子どもたちは、はじめて、阿部正弘が立たされた状況が、どのくらい困難なものであったかが身にしみて理解され、わかってくるわけです。そして問題の把握も分析も可能になるわけです。そういうふうな作業をするためには、どうしても教師の発言は多くならざるをえない。
子どもが授業の中で、一つの問題を本当に自分自身の問題として追究するためには、その問題を子どもの意識の中に設定しなければならない。問題を子どもの中に設定するためには、教師の充分な発言は決定的に重要である。そうした中で、教師と子どもの対話が成立して子どもの内面に何かがおきるのです。
子どもの内に問題を設定することは授業を組織する作業の中で、教師の最初の大きな課題になります。
(林 竹二:1906~1985年・栃木県生まれ、教育哲学者、元宮城教育大学学長。斎藤喜博の影響を受け、全国の小学校を回って対話的な授業実践を試みた)
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