新任時代の経験がその後の教師の成長に大きくかかわってくる
新任教師が待ちうける学校が大変なときもあります。そのような学校では授業サボタージュ、授業妨害、罵倒、暴力、いやがらせなどの洗礼を受けたりします。とても、楽しく勉強するなんていう場ではありません。思い描いていた夢は、無惨にも音をたてて崩れ「こんなはずではなかった」「学校って、こんなところではないはずだ」という思いでいっぱいになります。そのときには気づかなかったが、後になって自分の価値観にしばられていたと思うことがあります。
このようなショックを受けたとき、教師自身、自らの世界を広げることが必要になります。ショックの対処法は、2通りあるように思われます。
1つの道は、新任教師特有の親しみやすさを大切にして、たとえ拙くても、目の前の子どもたちと格闘しながら、ともに歩む道です。そして、先達の教師たちの励ましの中で、これまでの子どもについての見方、教師の役割について、とらえ方を見直しながら、自らを育てていくあり方です。
そして、もう1つの道は、子どもたちにナメられてはいけないと、教師らしくふるまい、子ども観や教師の役割に関する自分の価値観に固執するあり方です。子どもたちや先輩の教師たちから学ぶ回路を閉ざしてしまうと、成長の機会を自ら失うことにもなりかねません。つまり、主観的に教師らしくふるまうことが、子どもたちから信頼を得られる本当の教師らしさを育てることを妨げてしまいます。
教師が自分の授業を確立し、深い子どもの見方を身につけるには、多くの場合、15年から20年かかります。教師自身のものの見方を変えることも求められます。
自分の授業を確立して、すぐれた教育実践を残している教師たちの多くは、新任期から数多くの試行錯誤と格闘の経験をもっています。
新任期における、教師の仕事、教師の役割のとらえ方の深さが、この後の教師としての成長に大きくかかわるように思われます。
(秋田喜代美:1951年生まれ、東京大学教授。 教師の成長や授業の学習を研究)
(佐藤 学:1951年生まれ 東京大学教授を経て学習院大学教授 学校を訪問(国内外2800校)し、学校現場と共に学び合う学びの改革を進めている)
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