カウンセリングの効用と限界
カウンセリングは、原則として、心の健康な子どもを対象に、心理的サポートをしたり、比較的簡単な課題解決の支援をするものである。
カウンセリングを続けていくと、症状がいっこうに改善されず、悪化していくこともある。面接していくなかで病理が明らかになったり、精神的脆弱さが露呈されてきたときは、相談を中止し、すぐに専門家に繋げていくことが求められる。
カウンセリングは、適切な心理的距離が保てる第三者のカウンセラーが行う方がうまくいくことが多い。
カウンセリングの最大の困難さは、自分の問題を解決したいという意識のない子どもである。親や教師が、何とかしたい気持ちで無理につれてこられても、関係がうまくとれずに終わることが多い。そのような場合は、カウンセリングではなく、教師が指導的なアプローチでかかわることも考えるべきであろう。
一方、カウンセリングによってサポートされ、心の平穏が得られたと感じる子どもたちも少なくない。その効用は
(1)心の安全基地
カウンセラーに、勇気づけられて問題解決に努力していく力が涌いてくる。カウンセラーから守られ、認められることによって、本来の能力を安心して発揮できるようになる。
いつでも困ったらカウンセラーに相談に行けるという関係が、心の平安の源になるのである。
(2)カルタシス効果(精神の浄化作用)
誰にも言えなかった苦しみや悩みを、カウンセラーに打ち明け、そのまま受けとめてもらえたと感じたとき、子どもの気持ちは落ち着き、安定感を取り戻し、癒されてくる。気持ちがすっきりとしてくる。
(3)問題に対する見方が変化する
子どもが「困難な問題である」と思いこんでいても、カウンセリングで問題に対する考え方が変わることで、子どもの気持ちが楽になることがある。
(4)問題が解決する
一人で悩んで煮詰まっている場合は、カウンセリングを受けることにより、子どもと一緒に考え、寄り添うカウンセラーがいる方が、解決する方法が見つかりやすい。
その際、解決方法はカウンセラーが教えるのではなく、あくまでも子ども自らが選択し、実行し、解決できるようにするスタンスが重要である。そのほうが定着しやすい。
(山崎洋史:昭和女子大学人間社会学部心理学科 教授。臨床心理士)
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