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学校のおかれた社会経済的背景と学力との間に強い関連性がある

 2006年度に関西のある県で実施された 学力実態調査の分析に私の研究室がかかわった。分析の結果、学校のおかれた社会経済的背景と学校の学力平均点の間に強い関連があることが明らかになった。とくに中学校では、その関連性がきわめて強く、学校の取り組みの効果を大きく上回るものとなっていた。
 これまで日本で行われてきた研究ではほとんど考慮されてこなかったものである。このことは、学校背景の違いを考慮することなく、各学校の 学力平均点だけを見て学校の成果を評価する場合、社会経済的にきびしい地域に立地する学校の努力が正当に評価されない可能性が高くなる。
 学校の成果を学力平均点の高低だけで評価し、さらにその評価に基づいて予算や補助金の配分を行うような政策は、不利な地域にある学校をさらに不利な立場へと追い込む「負の連鎖」を呼び込むであろうことが容易に予測される。
 学力テストの結果を学校の評価へ反映させようという自治体が増えつつあるが、学校の社会経済的背景を考慮に入れなければ、学校間の格差を不当に助長する結果しかもたらさないことを肝に銘じるべきである。
 そういったことを理解せず「学力テストの点数がかんばしくないのは、学校のせいである。教師のがんばりが足りないからだ」という学校・教師パッシングで教師たちの士気は低下せざるをえない。それに輪をかけるのが「学校選択制」や「教員評価」あるいは「学力テスト結果の公表」などといった、新自由主義的な思潮の広まりである。
 教育における新自由主義とは、「教育の場に市場競争を持ち込み、向上させよう」という考え方である。
 私たちの研究と経験から確実に言えるのは「学校・教師のがんばりは、テスト結果の一部を説明するにすぎない」ということである。
 テストの結果は「学校の力」のほかに「家庭や地域の力」によって生み出されている。個々の家庭のしつけや親の「教育熱心さ」や塾や習いごとへの投資状況などある。そして地域社会の経済的豊かさ・安定性、社会・人間関係の緊密さ、文化・情報環境のあり方などである。例えば、塾に通う子どもたちが極端に多い学校と少ない学校の学力平均点を単純に比べることに、どれほどの意味があるだろうか。家庭の力に大きな違いがあることは明らかである。学校の努力の違いに帰して考えるのは間違っている。
 今日の格差状況を是正するためには、新自由主義的な発想では不適切であるということである。新自由主義がもたらすのは、弱肉強食の世界であり、そこでは「強い者がより強くなり、弱い者が割を食う」度合いが一層増していく。
 その状況をストップするためには、新自由主義的とは対極的な「社会的公正」を重んじる発想を持ち込む必要がある。関西風に表現するなら「しんどい層の下支え」を重視するということでなければならない。
(
志水宏吉:1959年生まれ、大阪大学人間科学研究科教授。専門は教育社会学・学校臨床学、学校文化に関する比較社会学的研究)

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