ものわかりのいい大人とは本当の信頼関係は生まれない
価値観を押しつけず、何でも「いいんだよ」と言われれば、つき合うのは楽だ。だから子どもたちも、表面上はそういう大人と仲良くする。周囲には人気教師に見えるかもしれない。
しかし子どもたちは、そんな「ものわかりのいい大人」が自分たちの将来を真剣に考えてくれているとは感じていないはずだ。
そんなところに、人間同士の信頼関係は生まれない。お互いに傷つくことのない、上っ面のいい関係ができあがるだけだ。教師と生徒がいい関係でいれば、一見、その教育はうまくいっているように見えるだろう。でも、その裏側では大勢の子どもたちが不安に震えている。
大人は子どもを甘やかしてきたから、本当の信頼関係がどういうものかを知らないのだろう。子どもたちの信じられる相手とは、自分の思い通りになる都合のいい相手のことなのだ。
本当の信頼関係というのは、たとえ自分の思い通りにならなくても、その相手と関わりたいと思うような関係のことだ。それぞれの価値観をぶっつけ合い、ときには傷つけ合ってボロボロになったあげくに、ようやく築かれるものだ。
だから衝突を回避して「いい人」を演じていたのでは、何も生まれない。そんな教育が築く未来の社会には、凍りつくような冷たい風しか吹いていないのではないだろうか。
未熟な子どもたちに現実を乗り越える力をつけさせようと思ったら、子どもに対する愛と期待が大きければ大きいほど、「ここで甘やかせてはいけない」と思うはずなのだ。
(義家弘介:1971年生まれ、高校で退学処分となった不良が、北星学園余市高校の教師となり活躍する。後に横浜市の教育委員、教育再生会議担当室長を経て国会議員となる)
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