死ぬときには生まれてきたときのたましいよりも、もっと美しいものにしておきたい
ほんとにいい仕事、いい経営を持続的に行って長く繁栄し続けていこうと思えば、どうしても心のありさまが問題になるのです。
どうも考えてみれば、生まれてきたときの私のたましいというものは、まだまだ未熟だった。この厳しい社会の荒波にもまれながら、たましいを洗って磨いて、思いやりに満ちた優しい美しいたましいにする。そのために社会の苦役があるというふうに私は考えているんです。
人間というのは放っておくと、どうしても自分がいちばんかわいいから、自分だけの我欲にとらわれてしまいがちです。それを払って一生を終えたい。
こころのなかに利己的な自分だけがよければいいという気持ちを抱けば、その抱いたようなことが周囲にあらわれるし、逆に美しい思いやりに満ちた心、利他の心を抱けば、やはり周囲にそういうものがあらわれると思っています。
利他の心を善い心と言っていますが、善きことを思い、善きことを行えば人生はいい方向へ変わるし、悪いことを思い、悪いことを行えば、悪い結果が生じる。人生とはそういうものだと考えています。
誰もが住みやすい、すばらしい社会というのは、みんなと一緒に悲しんだり、相手の喜びを自分の喜びとする、そういう心にあふれた人たちが集まった社会ではないかと思うんです。
死ぬときには、生まれてきたときのたましいよりも、もっと美しいものにしておきたい。死というのは肉体の死であっても、たましいにとっては永遠の旅立ちだと私は思いますので、その旅立っていく私のたましいをより美しいものにしたいという気持ちがあるのです。
それが神さま、あるいは自然がわれわれに与えてくれた人生の意味なのかもしれないなと思います。
( 稲盛和夫:1932年生まれ、実業家。京セラ・KDDI創業者、稲盛財団理事長として国際賞「京都賞」を創設し人類社会の進歩発展に功績のあった人を顕彰、日本航空を再建し取締役名誉会長、若い経営者が集まる経営塾「盛和塾」の塾長)
(「何のために生きるのか」稲盛和夫・五木寛之著 致知出版社 2005年)
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