Aについて聞きたければBから聞いてみるとよい
子どもから話を聞きたいことがある。たとえば、○○子が、朝の会で沈んでいたというような場合。気になるので、その理由を聞きたいがどうすればよいだろうか。
休み時間、教室で「○○子、朝の会で元気なかったけど、なにかあったのか」と聞いても、○○子は表情を硬くして「なんでもない」と答えるにちがいない。小学校の高学年から高校生の生徒は、自分の心のなかのことを、簡単には話をしてくれない。
休み時間、教室にいる○○子に話かけるのはいいが、聞こうとするテーマとは別の、さしさわりのない話をし、少し打ちとけてからほんとうに聞きたいことを聞く。これがコツである。
つまり、「Aを聞きたければBから聞いてみる」という方法を利用するのである。
たとえば、
「○○子。きみの弟は池上小学校だったよな。担任の先生、だれなの」
「矢野先生」
「矢野さんか。酒飲みだろう。すごい飲んべえだそうだな」と言うと○○子も笑って、
「先生も飲んべえじゃないの」
「あ、ばれたか。あまり、人のことは言えないな。そうそう、ところで、朝、元気なかったな。気になっていたんだ。なんかあったのか。よかったら話してくれないかな」、こう聞くと、表情は瞬時、凍るけど、心はとけているので、
「友だちの悪口を聞いたんで、いやな気持ちになったんです」
「友だち思いだものなあ、○○は。やさしいからな。落ち込むよな。けど、あまり気にするな」と言うと、○○はうなずく。
ここまでで、これ以上、聞かなくていい。
この聞き方は指導の原則である。
「Aを聞きたいからAを聞く」ではなく「Aを聞くためにBから聞く」ということだ。これがプロの、ていねいな仕事ぶりでなのである。
(家本芳郎、1930~2006年、東京都生まれ。神奈川の小・中学校で約30年、教師生活を送る。退職後、研究、評論、著述、講演活動に入る。長年、全国生活指導研究協議会、日本生活指導研究所の活動に参加。全国教育文化研究所、日本群読教育の会を主宰した)
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