一人ひとりの子どもと雑談し話し合える関係をつくる
子どもをじょうずに指導するには、子どもをよく知らなくてはなりません。どうすれば知ることができるかといえば、子どもたちと雑談することです。
若い教師は、キーボードを叩いていると、すごく教育をやったという充実感をいだくそうです。事務的な仕事を志向する教師が多くなり、子どものなかに入って、子どもといっしょに遊んだり、おしゃべりしたりする教師が少なくなってきたのです。
そのためか、子ども指示し、命令することはできるが、話し合えない教師がふえてきました。
今、小学校で、教師の指導が成立しないケースが増えています。小学校で学級担任を持ちあがろうとしても、学級が荒れてしまい、一年で学級担任を交代する例が続出しています。担任が話しをしているのに、バカ笑い、私語、おしゃべり、もの投げ、立ち歩き、けんか、怒鳴り合いと騒然たる雰囲気で授業が成立しないのです。
こうした場合、どう学級を再建するか。大きな声で注意しても、その注意が徹底しないのですから、もう、一人ひとりの子どもに接触して話し込むしかないというようになっています。
一人ひとりに近づき「国語の時間にけんかしていたが、どういうことになっていたの」と詰めより「少し気をつける」といった約束をとりつけ、再建していく。これがこのごろの典型的な実践となっています。
ほかにもいろいろやりますが、中心は一人ひとりの子どもと話し込み、その変革を迫るという方法です。
この実践のためには、子どもと話しあえなくてはなりません。子どもと対話や会話ができなくてはなりません。そのためには、日ごろから、いろんな子どもたちと、まずダベッてみることです。掃除のあとや休み時間等に、子どもと雑談することです。
雑談は話題が自由ですから「子どもは何を感じ、何を考えているのか」が見えてきます。
ところが、子どもと雑談すると、うんざりするような下品な話とか、教師の悪口とかが話題になります。わたしもよく「先生、その顔でよく生きていられるじゃん」「先生、着ている服ダサイね」などと言われました。
しかし、それはみんな教師と仲よくしたいメッセージだから、話をあわせていきます。「傷つけて近寄る」これが今の子どもたちの交わりのスキルです。
最初は焦らずに、子どもたちのレベルに合わせて、よく聞いてやることです。そうすると、四十人いれば四十人なりの興味と関心によって、教師との雑談を楽しもうとしてきます。
とすれば、どの子どもの話も、すべていったん受けとめてやらなくてはなりません。受けとめるとは、興味をもって聞いてやり、聞き返すなどの関心を示すことです。
もしも、教師の知らない話題があれば、子どもに聞いて知識を広げるようにすればいいんです。
こうして、子どもたちのレベルを共有しながら、教師の考えるレベルへと引き寄せてくればいい。
子どもたちと雑談しながら仲よくなっていくと、子どもたちは、何に喜び、何に憂い、何に苦しみ、どう感じ、どう考えるか少しずつわかってきます。
だから、どんな子どもとも話ができるように、たくさんのチャンネルをもった教師になること。その力がないと、子どもと話し合うことができずに、大声や怒鳴り声や脅かしで動かそうとなってしまいます。
(家本芳郎:1930~2006年、東京都生まれ。神奈川の小・中学校で約30年、教師生活を送る。退職後、研究、評論、著述、講演活動に入る。長年、全国生活指導研究協議会、日本生活指導研究所の活動に参加。全国教育文化研究所、日本群読教育の会を主宰した)
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