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授業を進めるうえで最も重要な技術は話し方である

 教師の話し方ほど、子どもに大きな影響を与える技術はないだろう。
 私が中学校で数学を教えてくれた水野宗三先生の授業は実にわかりやすく、明快かつ論理的であった。ややこしくなく、すっきりしていた。あのような話し方ができれば、子どもたちは幸せだと思う。
 上手な話し方の秘訣はどういうところにあるのだろうか。次のような点をふまえれば、誰でもわかりやすい話し方に変わっていく。
(1)
ゆっくり、はっきり
 話すということは伝達に目的があるのだから、伝わり方に気を配らなければならない。聞く相手の立場に立つということである。
 自分の話している言葉を、じっくりと自分の耳で聞き、自らの話し方を評価しながら話すくらいのゆとりを持とう。そう心がけていれば話す技術は必ず向上していく。
 早い話し方は言葉を多用し、無駄にする。せかせかと話す人は、聞く人の心までせかせかさせる。
(2)
聞く人の反応の診断
 話すことは伝達なのであるから、聴き手にどのように伝わっているかという診断をしないで一方的に話してはだめである。常に聞き手の反応に気配りをし、自分の話し方を調節すべきなのである。聴き手が飽きてきたり、疲れてきたなと感じたら、話題を転じたり、ユーモアを加えたりして聴き手をリラックスさせるなどの調整が必要なのである。
(3)
どんな話も対話である
 教師が一方的に子どもに説明をすることは、実際かなり多いと言えるし、極めて大切な話し方の一つなのである。教師がリードしない方がいいと言う人もあるが、それは基本的におかしい。すぐれた教師のすぐれたリードによって子どもは眼を覚まし、伸びていくからだ。
 その一方的な説明であっても、基本的には対話である。対話が成立しなければならないと私は考えている。
 対話というのは、その本質は「やりとり」にある。こちらからまず送り、それがどう受けとめられたかを聞き手がこちらに送ってくる。それを受けてこちらからまた送る。そういうことの繰り返しがもっとも望ましいのであり、そういうときに、聞き手は「楽しかった」「おもしろかった」「よく分かった」ということを実感するのだ。
 授業における対話も、これとまったく変わらない。授業とは即ち対話なのである。対話が成立している授業は効率を高め、子どもの学習意欲を高める。
(4)
一文を短くする
 一文を短く切ると、区切られたところで聞き手は話に一つのまとまりをつけることになる。だから話が分かりやすくなるのである。話し手にとっても、自分の話に自分でまとまりをつけるということが、話を分かりやすくすることにもなる。
(5)
具体例を引く
 分かりやすい話というのは、イメージを具体的に思い浮かべられる場合である。具体例を引くというのは、聞き手の経験にあることがらと、いま伝えようとしていることとを結びつけるということなのだ。伝えることが抽象的であればあるほど、具体例を引いて分かりにくさを補うことが必要になってくる。
(野口芳宏:1936年生まれ、元小学校校長、大学名誉教授、千葉県教育委員、授業道場野口塾等主宰)



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