自由だけでは子どもの世界の問題は解決しない
いじめ・自殺が社会問題になるに及んで、これまで自由を最大の価値として学校たたきをくりひろげてきたマスコミ、評論家たちは、軌道修正せざるをえなくなってきた。
彼らのうちの多くが、いじめの現実に直面して、素朴に、どうして教師はもっとよく見ていなかったのか、どうして抑えられなかったのか、と反応した。
しかし、よく考えてみれば、それは、これまで自由を旗印に管理を否定してきた自分の発言と矛盾するものでもあったのだ。管理をゆるめ、子どもの自由を最大限尊重した結果が、弱肉強食の世界を生み出し、いじめの激化をひきおこしているのである。少しカンのいい人たちは、自由だけでは、子どもの世界の問題はなにも解決しないだけでなく、かえって悪くする方向にいってしまうことに気がついたようだ。
自分の発言にまったく責任など感じない人たちが、自分のいっていることの矛盾など気にしないで、ある時は「自由を!」ある時は「管理を!」としゃべり散らしているのである。
学校たたきが始まって十年、ここに来てやっと風向きが変わってきたようである。私たちがこれまで主張してきた、教育と子どもの人権、管理と自由のバランスをうまくとっていかないかぎり、教育、子育てなど不可能だということが、少しずつ市民権をえてきたのである。
(河上亮一:1943年東京都生まれ、埼玉県公立中学校教諭、教育改革国民会議委員、日本教育大学院教授を経て、埼玉県鶴ケ島市教育委員会教育長、プロ教師の会主宰)
(「プロ教師の仕事術 学校という戦場を生き抜く技術と知恵」河上亮一著 洋泉社 1997年)
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