学校現場を見てきて感じること
18年間、全国の学校現場を何回も見て回っていると、ゆとり教育を受けてきた子どもたちの質が随分変わったということをよく聞いた。一つは学力の低下です。それに、子どもたちに粘りがなくなった。ルールが守れない。一番よく聞くのは、体育館で整列ができないという話です。
私のところに進路講演の依頼が来るわけは、進路問題以外にしつけとか、生活指導のような話も含めて期待されています。学校で指導していることを、教師でない人間の口から説いてほしい、ということです。
進路講演で話すことは、「遅刻するな。授業は一生懸命聞け。部活は続けろ。学校行事には参加しろ」ということです。この、「当たり前のことができる力」をもつことが私の伝えたいメッセージです。
人として基本的なことができない生徒は、学力も伸びません。行きたいところには行けない、ということです。
それは、社会に出てからも必要なことです。時間にルーズな人間からは人が離れていくし、金髪で会社訪問できるわけがない。パンツが見えそうなスカートはいて、地べたにへたりこんでいるような人を会社がとりたいと思いますか。一緒に働きたい人を、社会は受け入れます。
だから講演でも山河ははっきり言います。みんなだったら、社会の立場に立って考えた場合、まっキンキンのへたりこんでいる人間と、部活を一生懸命やって、毎日1時間でも勉強しましたっていう人間と、どちらをとるかって。すると子どもは、やっぱりまじめな人がいいと手を挙げます。そのまじめさがね、受験の合否だけでなく最終的には社会に出てからの生きる力につながるのだと。
全国的には、人間力を高める教育に力点をおいている学校がたくさんあります。便所掃除を率先してやらせる学校もあります。そういう事例を山河は意識的に講演で紹介するようにしています。
学校は、人としてどう生きるかということについてもちゃんと指導しようとしているわけですよ。にもかかわらず、マスコミは管理教育批判を相変わらずやっている。もうちょっと、学校という場所がどういうところか、親も社会もよく考えてみる必要があるのではないですか。
(山河健二:株式会社ベネッセホールディングス執行役員-塾・教室カンパニー長)
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