多くの教師に不足している教材を深く解釈する力と子どもの声を聴く力
一つは、教師自身の教材を深く解釈する力です。生きる力に結びついていくような深い学びを導くためには、単元の系統的なつながりや本質を押さえたカリキュラムをつくる力が必要です。
その中核を見極め不要な部分を削っていくから、最も本質的な部分にスパッと切り込む授業が可能になっているわけですね。
中核がきっちり押さえられれば、素材も広く日常のなかに求めていくことができるし、脱線してもポイントがぶれない。
具体的なある一つの点から問いを立てて世界を見るという授業展開に、なぜ子どもたちが面白く参加できるかといえば、それが教科書による理科・社会科の枠を超え、本物につながっていくという実感があるからでしょう。
その意味では、どんな手順で何回発問して…というような指導案にこだわる必要はないのです。子どもが出してくる問いに徹底的につきあいながら教材を深めていく姿勢です。
素材は、教科書であってもいい。最初は年に一つでもいい。自分ではうまくいかなくても面白いと思う教材を同僚と共有しながら、その可能性に一緒に取組んでいくのもよいと思います。同僚間の見せ合い語り合いのなかで、授業での工夫が具体的に見えてくるでしょう。
もう一つは、子どもの声を聴く力。子どもの発言を解釈する力と言い換えてもいいですね。この力があれば子どもの言葉から背後にある考えを読み取って、教材に結びつけていけるのですが、力が不足している。
聴く力が不足していると「関係ない」と聞き逃してしまう。そういう先生は授業場面でも一問一答で少しでも指導案と違うところがあると切っていきます。本当は、指導案以上に大切な思考や発言が子どもの側から起きている。子どもの声をよく聴ける先生というのは、子どもの言葉を安易に置き換えません。子どもが教師の問いを受けて、子ども自身の言葉で置き換えをしていく。
グループ討議は子どもが発言しやすくなるし、思いもかけない多様な意見が出てきます。問いを全員で共有しながら、一緒に授業を練り上げていくことができるのです。子どもの学びが難しくなっているのが現代です。であればこそ、子どもから学んで一緒に追究していく授業こそが大切なのだと思います。
(今泉 博:1949年生まれ、元東京都公立小学校教師、「学びをつくる会」などの活動を通して創造的な授業の研究・実践を広く行う。北海道教育大副学長(釧路校担当))
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