子どものそばに立ってあげて
今、日本の子どもたちが、病んでいます。不登校、ひきこもり、心の病、自殺、いじめ、非行、少年犯罪、児童虐待など、子どもたちについての悲しい報道が、絶えることなく続いています。
これらの子どもたちの問題の背景に、私たちの社会は、つねに緊張を強いられ、常に情報を集め、対応していかないと置き去りにされてしまう。そんな社会になっています。
たぶん子どもたちの目に映る親や先生、大人たちは、いつも走り回り、何か話しかけても「あとで」と去っていく忙しい存在です。多くの子どもたちは、社会や大人たちに対して閉ざされてしまっています。
そして、その寂しさの中から「自分は愛されていない存在」「もうどうなってもいい」と、さまざまな事件や問題を引き起こしています。
子どもたちは、受けた優しさや愛が多ければ多いほど、語られた夢や希望が多ければ多いほど、非行や犯罪、心の病から遠ざかります。また受けた愛や優しさが深ければ深いほど、非行、犯罪や心の病になっても、その傷は浅くなります。
今、私たち大人は、子どもたちを見失っています。子どもたちが本当に求めているのは、お金や服や、ゲーム機や携帯電話なのでしょうか。確かに子どもたちは、欲しがりますし、親たちも、きちんとかかわれないことへの償いとして買い与えています。
でも、子どもたちは知っています。なぜ、そんなものが欲しいのか。満たされていないから、寂しいからだと。なぜ、大人たちが、いとも簡単に買い与えてくれるのか。親たちがきちんと向き合って日々生きていないことに対して、やましさを持っているからだということを。
大人のみなさん、子どもたちが本当に求めているものは、何なのでしょうか。わかっているはずです。
すべての大人たちにお願いです。親として、祖父母として、近所の一人の大人として、人生の先輩として、子どもたちのそばに立ってあげてくれませんか。そして、ともに喜び、ともに悲しみ、時にともに悩み、多くの時を一緒に過ごしてくれませんか。子どもたちは待っています。
(水谷 修:1956年横浜市生まれ 1992年に定時制高校の教師となり、横浜市を中心に夜の繁華街をパトロールする「夜回り」を始める、2004年教職を辞し、全国で講演と夜回りを続けている。生徒の更生、非行防止、薬物汚染の拡大の予防のための活動を精力的に行なっている。メールや電話による子どもたちの相談に答え不登校や心の病、自殺などの問題に関わっている。花園大学客員教授、テレビコメンテーター)
| 固定リンク
「子どもの実態」カテゴリの記事
- 子どもの真実がわかるものの見方とは(2020.12.21)
- 軽度発達障害児童とは、どうすればよいか(2020.11.23)
- 授業中じっとしていない子どもを「学ぼうとする身体にする」にはどうすればよいか(2020.08.26)
- 偏差値45~55の生徒の特徴と偏差値45以下の生徒の特徴、このグループからの脱出法とは(2020.08.11)
- 子どものときの遊びは、人間らしい人間になるために絶対に必要である(2020.04.21)
「保護者の実態」カテゴリの記事
- 家庭も社会も学校に責任を押しつけている(2020.12.13)
- 保護者からのクレームで多いのはなにか(2020.11.26)
- 小学生の保護者が学校に期待することは何か(2020.10.26)
- 受験生の保護者がわが子に向って言っていけないタブーの言葉と、わが子が感謝する言葉とは(2020.02.13)
- 担任している子どもの腕にアザを見つけ、虐待の可能性を感じています、どうすればよいのでしょうか(2019.11.27)
「社会環境(社会・マスコミ・地域)」カテゴリの記事
- 保護者に非があり執拗な要求が続く場合は早めに弁護士に相談を(2016.09.30)
- 保護者と教師の信頼関係はいちから築きあげなければならない時代となった(2016.08.30)
- 学校の日常を包み隠さず世の中に知ってもらうと信頼関係が生まれる、クレーマー対策にも有効である(2016.08.23)
- 医療関係者も教育関係者も悲鳴をあげている(2016.07.03)
- なぜ日本経済は低迷し社会全体に閉塞感が漂うようになったのか、それを打開するにはどうすればよいか(2016.02.01)
「子どもと向き合う」カテゴリの記事
- あなたは教師として、子どもたちの言葉や思いの本質を聴き取る力がありますか(2020.05.03)
- 「お前は絶対に必要な人間なんだ」と言われれば、そこが子どもにとって安心して過ごせる居場所になる(2017.12.18)
- 子どもと関わるときに、してはいけないこと、すべきこととはなんでしょうか(2017.12.05)
- 荒れたクラスの子どもたちと向き合うには、どうすればよいか(2016.08.18)
- まるごと、その子と向き合えるか(2015.01.13)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント