子どもに話をするときのコツ
子どもが教師の話を聞いているかどうかは、目をみるのもいいけれど腰を見なさい、と芦田恵之助先生から教えられました。腰がピンと立っていないときはあなたの話を聞いていない。お義理にこっちを向いているだけ、心は眠っているのだと、よく聞かされました。
話は5分以上話すべきでないと思います。3分がいいのですけれども、それ以上は涙をのんでとにかく、いったんやめるべきだと思います。一年間教えておりますので、話す機会はいくらでもあります。ですから、惜しくてもやめないと、何の感動を与えないものになってしまいます。
子どもへの話は「構成」、「話しだし」と「題材」にかかっていると思うのです。しかし、「話しだし」も同じ形をくり返していますと、中学生の最もきらいなマンネリになってきますから、だめなのですね。
「構成」はよくよく考えてから、それをガラッとひっくり返したほうが大体はいいようです。「結び」はほとんどないにするのがコツのようです。パッとやめる、ていねいに結びますと、大体だめになるようです。
「思い出」話はよくないと思います。自分が小さいときは、何とかができなかったとか、話しべたであったとか、そういう話は、いかにも私もあなたの仲間であるというふうな印象を与えると信じられているのですが、まったくの反対で、子どもたちはそういう話はどのように話しても、自慢話としか受けとれないようです。昔はできない子だった、しかし今は教師として立っている-そういうふうにしか取れないのです。
「テンポ」はマンガのテンポがいいのです。ていねいでなくて、ちょっとおそまつなぐらいのテンポです。有名なマンガ家の場面の移し方にテンポを学べると思うのです。
「ことばが陳腐」ではだめなんですね。子どもは雰囲気のようなものに影響されやすいのです。牡丹の花を見て、「きれい」という一語で片づけるような感覚で話していますと、ことばで失敗することになるのです。たとえば、「観点として、どんな所をみつけたのか」と言うときでも、「観点としてどんな所を拾ったのか」と言うふうに動詞の使い方に気をつけます。一種の雰囲気の豊かさが生まれてくるのではないでしょうか。
(大村 はま:1906-2005年、長野県で高等女学校、戦後は東京都公立中学校で73歳まで教え、新聞・雑誌の記事を元にした授業や生徒の実力と課題に応じた「単元学習法」を確立した。ペスタロッチー賞、日本教育連合会賞を受賞。退職後も「大村はま
国語教室の会」を結成し、日本の国語科教育の向上に勤めた)
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