自分一人に話されているように感じる話し方
私が新任の教師だったころ同じ学校に青木という生物の先生がおられた。子どもたちに慕われている人気ナンバーワンの教師であった。ある日、三浦が生物室の前を通ると、青木先生の声が聞こえてくる。その話し方がすばらしいのである。
説明するときはゆっくりとわかりやすく、発問もわかりやすく、そして何より子どもに本気で語りかけている。
子どもの発言にもきちんと対応して、子どものことばを深く受け止めている。誠実に子どもと向き合い、子どもをくるみこむような優しい話し方である。
この話し方に接していたら、聞かざるを得ないし、好きになるのは当然だと思われた。むろん、学習の成果も上がるはずである。
のちに私は教師の話し方について研究するようになったが、その出発点はここにある。
また「みんなに話しかけているのに、子どもは自分一人に話されているように感じる話し方」を教師の話し方の究極の姿として思い描いたが、それはこの青木先生の話のイメージをことばで表したものである。そこには、ていねいさ、優しさ、そして何より子どもに対する誠実さがあふれていた。
(三浦和尚:1952年生まれ 広島大学附属中・高等学校教諭 愛媛大学教授 日本国語教育学会理事 国語科学習指導の方法について考察)
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