教室を参観して学ぶことが多かった、教育の事実から学ぶことが重要
教育の事実から学ぶことが重要である。
私が学校訪問をし、教室を参観する活動を始めて20年になる。日米合わせて約1200校訪問し、8000教室を参観した。
ふりかえってみると、どの学校も同じ学校はなかったし、どの教室も同じ教室はなかった。どの学校の抱えている問題もそれぞれ多様であり、どれ一つとして同一の問題として議論することは不可能である。
そして、良い学校で同じものは一つもなかったし、良い教師で同じタイプの人も一人もいなかった。
私の研究方法は、研究者自身が調査対象となっている人々と連携して問題の解決に関与し、協同で実践を創造し、その解決の過程を探究する、アクション・リサーチという方法である。
しかし、最初の五年間はなんども「もうやめよう」と迷うことが多かった。学校を訪問し、悩みを抱える教師たちに助言を求められても、有効な助言を与えられない非力さに耐えきれなかったのである。
にもかかわらず、20年間も研究を続けてこられたのは、なによりも学校を訪問し教室を参観して学ぶことが多かったからである。
書物から学ぶことはもちろん大切だが、教育の研究者や実践者は、それ以上に教育の事実から学ぶことが重要である。教室の現実を書物を読むように読み解かなくてはならない。事実、これまで学校や教室を訪問して一回として失望した覚えはない。
(佐藤 学:1951年生まれ 東京大学教授を経て学習院大学教授 学校を訪問(国内外2800校)し、学校現場と共に学び合う学びの改革を進めている)
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