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苦情を言ってくる親に対して教師が信頼を得るにはどのようにすればよいか

 苦情の世界においては相手を観察する力が重要性をもつ。苦情の世界のプロは相手の気持ちを探り当てることに長けている。熱くならないことである。
 教師はどうか。苦情への反応は否定から入ることが多かろう。それでは問題の解決を避けているようなもので、話はまとまらないことになる。
 苦情の世界では相手の心理・真意を探り当てることがいちばん難しい問題なのである。相手の話だけを鵜呑みにすると判断ミスをすることになる。なぜそんな発言になるのか。その言葉の裏に秘められた気持ちはどういうものか。それをしっかりつかめなければ、問題の核心にせまった解決はできない。
 親と対面するときは、親と教師は平等でなくてはならない。心のどこかで「俺は教師だ、特別だ」と思って対応すると失敗に終わる。「そうは言いますが、学校には学校の規則というものがあるのです」と、対話が不利になると教師は有利な立場に置きがちだ。上から目線になるのだ。教師は気づいていないだろう。
 これが親から見たら癪の種だ。「何であんな言い方をするのか。偉そうに」となる。
 固い頭を持っている職業のなかに教師もあてはまるが、一番の考え違いは「親は子どものことになると見境がつかなくなる」と思い込んでいる教師は、頭の柔軟性を失っている。
 学校と同じとは言えないが、商業は顧客相手のサービス業の世界で苦情の宝庫である。苦情の歴史は古く40年にもおよぶ。「苦情を言う人は何かに困っているから言ってくる」と考えている。
 教師はどこで保護者対応を学んでいるのだろう。現役の教師は研修を受ける必要があると私は考えている。今やっと苦情には対応能力や技術が必要だと気づいた程度で、学校はそれくらい遅れている。教師には子どもをお客様として迎える気持ちはほとんどないだろう。そうした思考だから問題が生じてくるのではないだろうか。
 学校で起こる問題は、似ているようでも微妙に違いマニュアル化できないケースが多い。これを克服するには失敗した体験がよい見本になる。
 研修会場で苦情現場を高校の教師にやっていただいたことがある。いつもなら責められている立場の教師が親を演じるからリアル感がある。悪い対応例を先に見せて気づかせ、後によい対応例を演じてみせる。
 この研修の効果は、実際に直面したときの対応がスムーズにいくようになることだ。つまり、目から入る行動と耳から入る強い言葉が実際では役立つのである。特に学校では有効だと判断している。
 親の申し入れに対しては、内容にもよるが詳細を聞いて早合点することもなく、そうかといって時間をかけすぎることもなく、対応を図っていただきたい。最悪なのは話の筋が見えず、食い違いが生じて対立してしまうことである。これは絶対さけねばならない。こじれた場合の悲劇を知っていればなおさらである。
 親の信頼を得るには、対立を避け、常に子どもを念頭に置いた会話をこころがけることが大切である。親心もそこにあることを忘れないでほしい。
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関根眞一:1950年生まれ、百貨店に34年間在職しお客様相談室担当を経て、メデュケーション株式会社代表。苦情・クレーム対応アドバイザー)

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