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常識にとらわれない私の方法

 子どもの頃は手塚治虫の「鉄腕アトム」の漫画の影響を受けて「お茶の水博士」のような科学者になりたいと思った。
 私は少年時代から物事を深く考えることが得意技で好きだった。気になるととことん考えつくさなければ気がすまないタチなのである。私自身は陽性で負けず嫌いの性格である。時間さえあれば、絶対に問題を解けると信じて疑わなかった。よく考えた結果、これしかないという直観を私は頑固なまでに信じこだわった。独創的な人間というのは、一つのことに熱中できる根気があると私は思う。
 私は中学・高校とバレーボール部をやってよかったと思っている。練習してもいつも最下位。けれどもめげずに努力を重ねた。だから、打たれ強さが身についたのではないかと思う。後に私が研究に何度失敗してもくじけずに立ち直れたのもこの体験があったからだと今では思っている。
 よく、物事には常識というものがあります。多くの研究者たちは、他人の研究論文や実験結果を調べるところから出発する。他人のやり方を真似してしまう。そして、その結果、彼らが失敗したのと同じ原因で失敗してしまうのである。
 私と他の研究者たちとの大きな違いは、彼らは常識というものに引きずられて新しい発見はできなかったのだ。それは、過去の大発見が証明している。
 独創的なアイデアを生むには、「非常識なアイデア」であるところから出発する。だからこそ独創的だと言われるのである。
 青色発光ダイオードの材料としてセレン化亜鉛を用いるのが世界の常識になっていた。常識と言われながら成功していなかった。彼らは常識にまどわされて疑問もなく選択してしまっていた。私は、成功が「ゼロに近い」と言われている窒化ガリウムの材料を選択しても何ら不思議ではないはずと考えたのだった。
 私は発光ダイオードについては何もないところから独学で身につけ、すべてについて把握していた。私は会社で三種類の製品を完成させていた。
 私はとにかく何でも自分一人でやるスタイルだった。すべてを一人で行うことが独創性のある仕事には欠かせないことだと思う。人のマネでない自分流儀を徹底して貫くことが是非とも必要なことなのである。
 いくら研究しようが会社で製品として仕上げたことのない人には、理論的とは違う独特な直観が働く自分流が何なのかはわからない。私は難しい理論などに頼らず、自分の五感と勘を頼りに製品開発をしていった。
 私は自分で行った実験結果を重視する。実験の結果、起きている現象を見逃さずにストレートにとらえることは、最も大切なことなのである。私は現象が示すことだけから本質を見抜いていった。この方法で青色発光ダイオードの成功に導いた。
 私は実験装置を自分の手で作った。研究する資金が少ないためと、研究用の実験装置を外注すると何か月もかかってしまうからだ。自分で装置を作ることは重要なことで、自分流のやり方を編み出していける。
 私には実験装置を自分の手で作ることで生まれてくる職人技があった。絶対に大丈夫だという勘があった。最先端の研究開発には、いわゆる職人技と呼ばれる技術が必要になってくる。意外と単純なところで成否が決まるともいえるのだ。
 日本の研究者たちは備品を外注していた。だから彼らには実験装置の重要性がわからなかったのだ。自分で実験装置を作れば、さまざまな創意工夫がうまれ、改良が進み、確かめながら研究していけるのだ。アメリカでは新しい装置を自分たちの研究所で作ることによって新しい発見をしている。
 私は青色発光の研究を始めてほぼ一年、朝から晩まで、考えても、考えても結果がでなかった。にっちもさっちもいかなくなり、どん底まで落ち込んでしまった。
 普通、希望の光が見えなくなると、人は誰でも失望してやる気を失ってしまう。しかし、私は違った。失敗して落ち込めば落ち込む時ほど、ヒラメキが生まれる。
 どん底を意識することで、あとは這い上がるだけだという成功への直観が私にはでる。決定的なアイデアが浮かぶと信じていれば、本当に浮かんでくるものなのだ。そのときの実験方法のアイデアが成功の決定的な転機となった。
(
中村修二:1954年愛媛県生まれ、徳島大学 大学院卒、カルフォルニア大学教授。日亜化学工業()20世紀中には無理と言われた青色発光ダイオードを開発し、2014年にノーベル賞を受賞した)

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