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いじめはどのようにすれば克服できるか

 いじめはどのようにすれば克服できるか。金森俊朗はつぎのように述べている。
1 いじめを考えるとき、大事なことは子どもたちの下記のような実態をしっかりと捉えることである
(1)
子どもは様々なものに興味や好奇心をもち、日々成長のドラマを創っている存在である。
(2)
日々の成長のドラマを親や家族、教師や仲間に受けとめ、ほめ、認めてもらいたいと願っている。
(3)
希望を持って学校へ来たはずの子どもたちが、学年が上がると絶望感を背負い、自分に憎しみを感じ、自己否定に進んでいく。
(4)
学習、スポーツ、文化が競争、勝ち負けの評価が伴い、子どもたちは優越感、劣等感を持つ。
(5)
学校は人と人が激しくぶつかり問題が起き、失敗をくりかえすところである。しかし学級には大人が担任一人しかいない。すべてに目がとどかない。
(6)
子どもは人と人の距離がうまくとれない。
(7)
学校はいじめられやすい場所だ。授業であれ、給食であれ、個よりも全体が一斉に行うことが強調される社会である。だから遅れたり、特別であったりするとどうしても攻撃を受けやすい。排除されやすい社会である。
2 いじめをどうとらえるか
 いじめとは、その人がその人らしく生き、学ぶことを精神的、肉体的な暴力によって奪う行為であり、その人の人間的な誇りを著しく傷つけ、その人から生きる勇気と希望を奪う行為だと私は規定している。
3 いじめの原因
 自分への不安、ストレス、葛藤を処理しきれないとき、他者への攻撃、暴力性となって現れる。
(1)
経済的な貧しさからくる葛藤、ストレス、不安
(2)
親・教師をふくめた大人たちの愛の貧しさからくる不安、葛藤
(3)
学力競争から落とされる、ついていけない疎外感からくる不安
(4)
大人社会にあるお祭り文化に子どもの心が奪われ、セレモニー文化の中で単純な毎日を過ごしているという倦怠感
4 いじめられた子どもがいじめる側に転化するような実態がある。
5 子どもが考えた三つのいじめ解決策
 1995年に実施した、文部省と法務省アンケートがある。それを見ると、子どもたちはつぎの三つの解決策を提示している。
 子どもは良くわかっていると思う。誰かが教師に呼び出されて注意をされる、そんなやり方でいじめは解決しない。学級や学校全体が全体として話し合って、やめようという世論を作っていかない限りは簡単にやめようと言えない、と子どもたちは言っているのだ。
(1)
先生とゆっくりと話しをする時間があればいいんだ。
(2)
先生が優しい、先生が思いやりを持ってくれたら解決する。
(3)
学級や学校全体で話しあいをしていくことが大事なんだ。
6 学級づくりは四月が大事
 私は一年間の三分の一ぐらいのエネルギーを特に四月に投入しなければいけないだろうと思っている。その理由と私のやり方は
(1)
子どもたちは四月に強い期待と不安を、教師、友だち、学ぶことに対して持っている。
(2)
子どもたちの強い期待に対しては、私はちょっとしたことであってもしっかりと応えるようにしている。
(3)
子どもたちに「私はこれまで学校でこういうことがあった。こういう悲しいこと、辛いことがあった。それを、先生が今年なくしてほしい」ということを言ってもらうようにしている。それを私は教卓から聞かずに子どもの横に行って全力をこめて聞いて、全力をこめて受け取ったということを示す。子どもは心配ごとを言っても大丈夫だなと思ってくれれば成功である。
 次のような事例があった。いじめの辛い体験をある子どもが話したので、翌日、絵本「わたしのいもうと」を読んだ。いじめはその人の生きる力を奪い、前向きに生きよう、他者と関わろうとする心を破壊するものだということがよくわかる。主人公は命を絶つ。子どもたちは涙を流して聞いていた。
 いじめの作文はたくさんあるので、それを読みあげれば、せせら笑う子どもはまずいない。
7 子どもの関係づくりは遊びから
 今、学校の一番の課題は子どもたちの関係づくりを育むことだととらえている。親が学校に期待しているのは、友だちとうまくやっていける力、社会性を身につけてほしいということである。さまざまな調査ではっきりしている。
 どうやって子どもたちの関係づくりを育むか? 基本は遊びなのである。
 遊びの原型は手つなぎといわれている。子どもと子どもがつながるために、あそびが本来持っているボディコミュニケーションに着目する。
 花いちもんめ、かごめかごめ、するりと抜ける鬼ごっこ。
 体と体をつなぎあう、ぶつけあう(Sケンなど)ということが基本だ。
 そういった遊びを私は4月から豊かに展開することが必要だろうと思っている。
 体育も走って交わる、手つなぎ鬼など、遊び文化を取り組んだものがいっぱいある。
8 問題の根っこを解きほぐす
 問題の根っこを解きほぐす努力をこそ、子どもたちに見せ、子どもたちとともにすることが必要だと思っている。
解きほぐすということは、
(1)
人間をどう見るか
(2)
本当に根気強い努力が必要なのだ
という二つを、子どもたちと共有することだ。
 そうすれば、問題がおきて子どもたちは、
(1)
単に謝ってすませようという方法をとらなくなる。
(2)
もっと根本を見ようということになる。
 基本的には全員で全体の場で解決することが必要である。いじめは、全員に絶対につながっているのだから。
 クラスで問題がおきれば学級でとことん解決していくんだ。そして、解決したあとでみんなで、やったあ、と快感を味わうことによって、また次に起きたときもそういうふうになるんだという、期待と安心感を育てる学級づくりに最も重点をおくべきである。
(
金森俊朗:1946年生れ、元小学校教師、北陸学院大学教授。「仲間とつながりハッピーになる」教育や人と自然に直に触れ合う命の授業を行う。NHKで日本賞グランプリ受賞)

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