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保護者と分かり合える関係をめざすにはどうすればよいか

 教師が保護者のクレームを拒否的にならずに心をこめて傾聴することで、その保護者の心の安定をはかるようにします。
 心を込めて保護者の意見に耳を傾けるのです。教師にありがちな「でもねぇ」は絶対に使わないことです。不思議なもので、自分の意見を聴いてもらえているというだけで、何か救われた気がしてきます。話を受け入れられることで安心感が得られるのです。
 私は、教師生活の半数近くを、心理教育相談室で勤務してきました。心理臨床の世界で開眼させていただき、人の心の動きの素晴らしさ、すごさを体験させていただきました。
 人の心の動き一つで、「心の問題」は暖解できるという経験をしました。
 不思議なことに、自分が支えられているのだという実感を持つことだけで、勇気を与えられたようになれる。そこで、解決へ向かっての力が湧いてくるものです。心理教育相談では「治す」のではない。「治っていかれるものだ」と言いますが、まさに言い得て妙だと思いました。
 また、逆のことも経験しました。不登校の子どもが「担任の、あの言葉が・・・」と言い、その子の一生の方向を変えてしまったこともあります。私は師匠から「ことば一つで人の命を絶ってしまうこともあるのだよ」と言われたとき、来談者に返すことばの一つひとつを大切にせねばならないと思い知りました。
 保護者対応でも「この力」が活用できるのではないでしょうか。まさにカウンセリングの極意が、保護者との関係づくりに活かされると思います。
 ロジャースの提唱した「積極的関心」「無条件の受容」こそが、保護者の対応に活かされるのです。
 次に、共感的理解が大切です。相手の立場になって物事を考えるとき、相手の方のつらさや悲しみが理解できます。相手の立場を自分に置き換えてみると、見えてくるものがあります。
 私たちが、苦情を持ちかけてきた保護者を「モンスター」や「いちゃもん」と呼んだりする限り、共感的理解は程遠いものとなってきます。
 ところが「クレーム」を「苦情」と取らずに「願い」と取るだけで、ぐっとその距離は縮まることも経験されていることだと思います。
 相手の大変さに思いやる心があるだけで、その場は収まるものであり、一緒にその解決を考えることにより、学校への信頼感はぐっと増すものです。
(
西林幸三郎:大阪市公立小学校校長を経て、大阪芸術大学教授、臨床心理士)

 

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