学級の事件を解決するための指導力とは
私は学級でさまざまな問題が起きて当然だということを前提におかなければならないと思っている。
事件解決のための五つの指導力とは
(1)学級で起きる事件の多くは、当事者だけが関係しているのではないという見抜き、洞察力
それらの事件には、ひとつは、長い時間の経過が関係している。これまで積み上げてきた当事者と他の子どもたちとの関係性の中で起きているということだ。
もうひとつは、学級が作り出している雰囲気や世論や力関係につながっているということだ。
(2)子どもの話を全体の場でとことん聞いていくという姿勢が求められる
大事なのは、起きた事柄だけでなく、それを生み、支えている子どもたちの思いや考えを丁寧に聞き取ることである。当然、予定されていた教科の授業はできなくなる。
(3)事件を瞬時に全体の流れの中に位置づける力量
事件を聞き取った後でどうするかという問題と、今、この事件の取り組みを続行することの価値の大きさの両方を見通して、瞬時に全体の流れの中に位置づける力量が指導力となる。
(4)事件の当事者と周りの子どもが納得し前向きに歩める場を創造する力量
事件を起こした者も、起こされた者も、周りにいた子どもたちも、すべての子どもが納得し、今後笑顔で前向きに歩める場を創造することである。
(5)教師も大人として自分の生き方とつなげて捉える力が必要
事件を単なる子どもの問題ではなく、教師としての自分も大人の人間としてこの問題につながっているという、自身の生き方とつなげて捉える力が必要になる。
ところが、実際に起こる事件の多くは、面倒な事件として捉えられ、「問題を起こした子は謝りなさい。これから仲良くしなさい」という指導で終わる。
複雑にからんだ人間的な感情を解きほぐすという時間はなく、優先されるのは授業時間数の確保ばかりである。
しかし、学校で子どもが起こした事件は瞬時に対応する必要がある。学級にいる、担任がものの見事に事件を処理しないと、問題はくすぶったりして大きくなっていく。
学校は、それぞれの子どもたちが何を学びどう生きていくかを考える場所である。子どもたちが問題点をのりこえ成長するために、子どもたちと共に考え、はっきりさせる必要がある。
当事者の子どもが、そのとき教師に対して怒りを覚えたとしても、後で「あのことがあったからこそ、自分の弱さと向き合えるようになった」と考え直させることが必要なのである。
(金森俊朗:1946年生れ、元小学校教諭、北陸学院大学教授。「仲間とつながりハッピーになる」教育や人と自然に直に触れ合う命の授業を行う。NHKで日本賞グランプリ受賞)
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