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教育や人生で最も大切なことは自分の使命を知ること

 私が教師になって試行錯誤の9年間が過ぎても、苦しんでいた。もちろん教育や人生においてもっとも大切なことは、個人的な使命をはっきりさせなければ、よい教師にはなれないことは知っていた。たんにその答えがみつからなかったのだ。
 ある晩、私はハーパー・リーの「アラバマ物語」を再読し、アティカス・フィンチのなかに自分のヒーローをみつけたことに気づいた。
 物語の始めのほうで、アティカスが帰宅すると、幼い娘のスカウトが泣いている。娘は学校でひどいいじめにあったのだ。
 娘は弁護士の父親にこう尋ねる。「アティカス、ニガー(黒人の差別語)を弁護しているの?」町中の人たちが弁護すべきでないと思っている人物を、どうして父親が弁護しているのか、娘にはわからないのだ。
 「いろいろな理由があるからだよ」と父親は答える。息子のジェムは、父親に裁判に勝てるかどうか尋ねる。父親は静かに「いいや」と答える。それが稲妻のように私を打った。
 社会が人種差別者であることをアティカスは知っている。社会の暴力、偽善、不正、無知を彼は認識している。そして、自分が裁判に負けることを知っている。
 だが、アティカスは遠くに逃げ出したりしない。彼は最善をつくして闘うために裁判所に入っていく。それが彼の信じていることだからだ。彼には使命があり、できるだけそれに沿って生きようとしている。
 それについて考えると、いまだに私は泣けてくる。私の教室は裁判所である。私は勝つことより負けることのほうが多いだろう。努力したにもかかわらず、子どもたちを貧困や無知から救い出せなかったことがたくさんある。
 だが、もはやそのために自分を無力だと思うことはない。私には使命がある。昨日、闘いに負けても問題ではない。自分に勝算がなくても問題ではない。
 テレビや企業の論理に抵抗し、人格をみて人を判断するような社会を実現するために、社会と闘おうとしているのが、私一人だけだったとしても問題ではない。アティカスが道を示してくれたからだ。
 アティカスの息子のジェムがやがて成長して、彼が父親の知性、勇気、謙虚さを評価するようになると、彼は町の通りを駆けながら叫んだ。「アティカスは私と同じ紳士だ」と。
 私も校庭に走り出て、同じセリフを叫びたい気分だった。
(レイフ・エスキス:米国の教育を根本から変える力を秘めた小学校教師として注目されている。ロサンゼルスの貧しい移民家庭の子どもたちが多く通う小学校のクラスを22年間受け持ち、学力を飛躍的に伸ばし、品格のある子どもを育て、教師として初めて、アメリカ国民芸術勲章を受章)

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