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私のクラスで成功した学級づくり

 私のクラスで成功したアイデアを親や教師と分かち合いたいと思う。現在、米国の多くの教室で使われている。また、家庭で使っている親もいる。
 そのプログラムは「教室に経済システム」を導入することである。それを生徒たちに実践させている。そのプログラムを行うことによって、子どもたちの人格形成をうながし、将来、社会に出て生きていくための貴重なスキルを養ってくれる。
その「クラスの経済システム」のプログラムは
1 子どもたちは自分の席に座るために賃料を払わなければならない
 クラスは5つか6つの机を寄せ集めた島に分けられる。私は子どもたちをできるだけ対面するように座らせる。友情や協調精神を育むためだ。
 最初のクラス討論のあと、子どもたちが提案するテーマにもとづいて、それぞれの島に名前がつけられる。教室の前方ほど座席の賃料(1ヵ月)は高くなる。(教室の前方:
1000ドル、教室の後ろ:550ドル)
 例えば、ある年には、ロサンゼルスの地域にちなんで島が名づけられ、別の年には、地域にあるデパートの名称を使った。
2 子どもたちはクラスで全員が働く
 なぜなら、自分の席に座るために賃料を払わなければならないからだ!
 クラスの子どもたちは、次のような仕事に応募しなければならない。仕事の応募用紙が配られて、それに書き込むことが求められる。
(1)
銀行員(
56人、給料600ドル)
 クラスの
46人の生徒の記録をつける。顧客から貯蓄や小切手を受け取り、ほかの銀行員と共に口座を調整する。応募するには、信用できる人物であることを保証する推薦状を、ほかの教師や大人からもらう必要がある。
(2)
清掃作業員(給料
650ドル)
 教室の一部を担当区域として清潔に保つ。一人は毎日、流しを磨く、二人は一日に2度、教室を拭く。ほかの子どもはキャビネットにワックスをかけ、机を磨く。
(3)
採点係(給料
575ドル)
 文法と綴りの採点係だ。私が出す課題は模範解答があれば、誰でも採点できる。
 綴りの採点者は金曜日のテストを家に持ち帰り、月曜日の朝に採点したものを持ってくる。文法の採点者は、朝、宿題を集め、昼の休憩後に採点したものを返す。
(4)
メッセンジャー(
2人、給料525ドル)
 ほかのクラスや職員室に文書を届けたり、伝言を伝えたりする。
(5)
警察官(
35人、給料500ドル)
 警察官は教室の決められた場所をパトロールする。もし、生徒がクラスの規則を破ったら違反の記録をつけ、その生徒から罰金を集める手伝いをする。
(6)
ビデオモニター(給料
575ドル)
 ライブラリーに収納されている
400本以上のビデオとDVDを管理する。金曜日に貸し出し、月曜日に返却される、その貸し出し業務に当たる。
(7)
リサイクラー(
2人、給料550ドル)
 不用品のリサイクルが滞りなく行われているかどうかを監視する要員で、缶は毎日、リサイクル用の箱に貯められる。
(8)
出欠モニター(給料
475ドル)
毎朝、黙々と出欠を取り、休んだ生徒からは欠席理由を書いたメモを受け取ってファイルに保管する。
(9)
事務員(
3人、給料550ドル)
 私の事務をやってくれる3人の生徒がいて、書類を配ったり、集めたりしている。教材の整理をし、どこに何があるかを管理している。
(10)
ボールモニター(給料
485ドル)
 この生徒は運動器具のすべてを管理する。トレーニング用具も含まれる。
(11)
ライブラリアン(
56人、給料525ドル)
 私は生徒たちに、優れた児童書を読んで、そのレポート(注)を月1回提出させているが、その児童書の管理をすると共に、この係を通して生徒たちに本の貸し出しを行う。
(注:生徒たちに文章力をつけさせるため、小説の主人公、敵対者、葛藤、時代・環境・人間関係などの状況、最も盛り上がったところ、結末、テーマといった項目に分けて分析させて報告させている)
3 給料の支払いと賃料
 給料の支払い日は、毎月、最終金曜日である。生徒はみんな年度はじめに一冊の小切手帳を受け取る。これはコンピュータを利用して私が作ったものだ。小切手の書き方や銀行への貯蓄の仕方は、私が生徒に教える。生徒は銀行の記録をつけておくための用紙を1枚渡される。
 すでにお気づきだと思うが、この経済システムでは、賃料が最高額の給料を上回っている。もし、月末に賃料が払えないと、生徒は強制的に立ち退かされ、床に座らなければならない。
 では、どうすれば月々の賃料を払えるだけのお金を貯めることができるのだろう? その答えは、私たちがボーナスと呼んでいる特別報奨金制度にある。生徒たちは市民として目立つ働きをしたり、オプションの活動に従事したりすることによって、ボーナスをもらうことができるのだ。逆に、ルールを破った生徒には警察官から罰金が課せられる。
(1)
ボーナス
10ドル・・・・・綴りのテストで満点(3回続けると倍額)
50ドル・・・・・ほかのテストで90点、週末のビデオの宿題をやる
100ドル・・・・・1ヵ月皆勤、算数の課外授業を受けるために早朝登校、シェークスピアを学ぶために放課後居残り、学校のオーケストラに参加、学校の合唱隊に参加、担任と一緒にギターを弾く
200ドル・・・・・ほかの教師にほめられる
(2)
罰金(違反を繰り返すと倍額になる)
50ドル・・・・・遅刻、宿題の忘れ、ほかの生徒が話しているときに聞かないといった行儀の悪さ
100ドル・・・・・机の上を散らかす
500ドル・・・・・不誠実
 ボーナスや罰金は「現金」で支給されるか、取り立てられる。私はコンピュータでお金をつくりカードに印刷する。前年のクラスの生徒から借りられないように、毎年、色を変えている。このプログラムは、現金の扱い方や当座預金の安全性を子どもたちに教えるというものだ。
4 自分の座席を買い取ることができる
 これからいよいよ本格的な楽しみが始まる。生徒は銀行に賃料の3倍払えばいつでも自分の座席を買い取ることができる。そのときから、月々の賃料を支払う必要がなくなる。これは借りるのではなく、所有することの利点を生徒に教えるものだ。
 だが、それですべてではない。生徒は他人の借りている座席を買い取り、地主になることもできる。その座席を借りている生徒は、地主に賃料を払わなければならない。
 想像できるだろうが、生徒たちはお金を稼ぎ、貯めることを強く動機づけられる。彼らは、金持ちが将来を見据えて一生懸命働けば、もっと金持ちになることをすばやく学ぶ。
 このシステムはもっと奥が深い。座席を所有する生徒は、
1210日と410日に固定資産税を支払わなければならない。
 生徒たちはこのシステムを通して、算数、経理、経済的な責任、税の構造などを学びながら、大いに楽しむ。
5 月末にオークションを行う
 月末に給料や賃料が支払われたあと、私たちは派手なオークションを行う。
 学用品、美術用具、書籍、運動器具などがオークションにかけられる。ここで子どもたちはあらゆる種類のレッスンを学ぶ。彼らは金切り声をあげ、怒鳴り散らし、経験を積んだウォールストリートのトレーダーを圧倒するような激しさで張り合う。
 物を買うのにあり金をすべてはたく子どももいるし、座席を買うために貯蓄をしたくて、賢く買い控える子どももいる。年度末までいっさい何も買わない子どももいる。私が最後の月まで、最も魅力的な品物の一部をとっておくのを知っているからだ。
 こうして生徒たちは、貯蓄や計画を立てることを学ぶ。なかでももっとも重要なのは、満足を遅らせることを学ぶことだ。
6 多くの親が家庭でこのシステムの一部を使っている
 自分の部屋をきれいにしない子や家庭の雑用の手伝いをしない子の話をよく聞くが、このシステムを使えば口やかましく言う必要がなくなる。
 子どもは家庭で小遣いをもらえるが、現実社会と同じように、仕事がなされた場合だけに支払われるのだ。
 土曜日に5ドルの小遣いをもらうことになっているとしよう。その5ドルが、夕食後の皿洗いの手伝い、寝室を清潔に保つこと、洗濯物の片づけをした場合に支払われることを明確にしておけば、子どもにガミガミ言う必要はない。仕事を完璧にしない場合には、小遣いはもらえない。口論も説教も必要がない。
 もし、子どもが映画を観にいくお金が必要だとか、友だちと遊びにいくお金が必要だと言った場合、答えはノーである。彼はお小遣いを稼ぐチャンスがあったのに逃してしまったのだ。
 今の子どもたちは、人生や自由や幸福を追い求める方法を忘れてしまっただけでなく、不幸にも「追い求める」という言葉を「権利がある」という言葉で置き換えてしまった。
 映画はすばらしいものだが、憲法に保証されている権利ではないことを子どもたちに理解させるのは、親や教師の勤めである。それらは特権なのであり、自分でつかみ取らなければならない。
 それは理屈ではない。ものごとのあり方なのだ。子どもたちがそれを早く理解すればするほど、人生において成功しやすくなる。
7 この経済システムの良い点
 こうした経済システムのよい点は、子どもたちを創造的にさせることだ。よい教師は生徒が人生の質を高める手伝いをする。
 多くの子どもが貧しさのなかで育っているので、私の主要な目標の一つは、希望や夢を無力にする貧困のサイクルから抜け出すには、どのような努力をすればいいかを子どもたちに教えることだ。
 自分で這い上がるよう、子どもたちに告げるだけでは十分ではない。私の経済システムを使って、生徒は資産を大切に管理し、将来の計画を練り、ほしいものを獲得する方法を学ぶ。運がよければ、生涯にわたってこれらの経済的なスキルを用い続けるだろう。
 いつの日か、過去を振りかえり、私と過ごした1年が最高の1年だったと思ってもらえれば幸せである。
(レイフ・エスキス:UCLA大学院卒、米国の教育を根本から変える力を秘めた小学校教師として注目されている。ロサンゼルスの貧しい移民家庭の子どもたちが多く通う小学校のクラスを22年間受け持ち、学力を飛躍的に伸ばし、品格のある子どもを育て、教師として初めて、アメリカ国民芸術勲章を受章)

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