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社会科:大事なことは決して先生からは言わない

 佐藤正寿は大事なことは決して自分からは言わないようにしている。
 たとえば、6年社会の授業で水墨画についての学習を佐藤はつぎのようにすすめている。
 佐藤は子どもたちに、日本の文化の良さを知って、日本を好きになってほしいと考えている。
 子どもたちが手に持っているのは、前の時間に描いた室町時代の画家・雪舟の水墨画を模写した絵である。
 子どもたちは、「細かいところがうまく描けなかったけど、雪舟はうまい」と感想を述べている。
教師「雪舟はすごいと思った人?」
教師の問いかけに、子どもたちほぼ全員が手をあげた。
教師「みな、墨の濃淡や細部の描写に苦労しました。だからこそ、作品の良さがよくわかるんです」
と言って、黒板にはったスクリーンに、雪舟の水墨画を写し出す。
教師「この作品のすばらしさをノートにたくさん書いてください」
子どもたちは4人一組になり、交互に情報交換。一番いいものを発表する。
子ども「遠くの木は薄く、近くの木は濃く描いてある」
教師「なるほどねぇ」とうなずいた。
大事なことは決して先生からは言わない。子どもの言葉を拾いながら授業を進めるのが佐藤流のやり方だ。
「たくさん気づいて、考えてほしい。体験も発表も映像も、すべてそのための手段です」と佐藤は言う。
(佐藤正寿:1962年秋田県生まれ、岩手県公立小学校副校長。地域と日本のよさを伝える授業をテーマに社会科を中心とした教材開発に力を入れている)

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