子どもは教材の新鮮さに感動する
私が行っていた授業は教科書に頼らない授業、自分で資料を豊富に用意した単元授業でした。ですからたくさんの本を買って読んで、本以外の資料も探して、準備は大変でした。
でも、せっかく用意したのだからと、その教材を使って何度も授業することが、私にはできませんでした。二度目になると、初めて教材を見つけて用意するうれしさがわいてきません。私自身がいそいそと教室に入れるのは、新しいものを持って行くときだけなんです。それを一度味わうと、そのときめきがないものを持って教室に行くことがいやになります。
それに、自分が前の授業でよくわかっている展開、こなしてしまった教材、それらをやるときには自分の心の中に小さな慢心がうまれます。謙虚さが減ります。
そして自分だけにわかる程度かもしれませんが「一生懸命になる」その程度がちょっと違うのです。
子どもは新鮮さに感動します。私自身が、新しいものへの小さな不安と期待をもちつつ、子どもに向けて、その教材を提供している、それが子どもを動かすのです。なのに、二度めだと、子どもと同格に胸がときめかない。それが、私はいやだったのです。
(大村はま:1906-2005年、長野県で高等女学校、戦後は東京都公立中学校で73歳まで教え、新聞・雑誌の記事を元にした授業や生徒の実力と課題に応じた「単元学習法」を確立した。ペスタロッチー賞、日本教育連合会賞を受賞。退職後も「大村はま国語教室の会」を結成し、日本の国語科教育の向上に勤めた)
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