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困った親が増え教師の心が傷つけられている

 「教師を辞めたい」と訴える教師のおよそ八割は、何らかのかたちで保護者から攻撃を受けています。実際に、辞職に追い込まれたり、うつになって休職せざるをえなくなる教師が急増しています。
 八割以上の保護者は、子どもへの愛情もあり、学校とも友好的につきあえます。ところが一部の親があまりにひどいので、学校現場は混乱し、教師は心に傷を負わされているのです。
 いまの親は、バブル期を経験し、欲望が強くて、耐える力が弱くキレやすくなっています。日ごろ親が抱えている不平不満をだれかに転嫁することで不満を解消して、心の安定を保つのです。教師はストレス発散のはけ口にされやすいのです。
 「学校教育はサービス業」という考え方が社会に広まり、子どもや親は教育サービスの消費者であるという感覚になっています。親がサービスの消費者だという感覚になれば、当然クレームも多くなります。「言いたいことは言わないとソン」とばかりに言ってきます。
 本来、保護者と教師は手に手をとって一緒に子どもを育てていく「大切なパートナー」です。こうした関係が崩壊しつつあるのです。
 「うちの子が徒競走で負けたのは審判がおかしいからだ。もう一度運動会をやり直せ」と言ってくるとんでもない父親が増えてきたのが最近の傾向です。
 そんな父親によく見られる特徴といえば、「家の中で浮いているお父さん」です。ふだん影が薄いぶん、妻や子どもに対して「お父さんも、やるときにはやるんだぞ」と自己存在感をアピールするために、ここぞとばかりにがんばります。
 「うちの子は、箸もまともに持てない。どういう給食指導をしているのだ」こういった、「何でも教師まかせ」の親が増えています。
 「うちの子が何で白雪姫の役じゃないんだ」といった「わが子しか見えない親」もいます。
 モンスターペアレントは数が集まり、軍団化することによって、とんでもない攻撃力を発揮します。最初は一人が騒ぎ出すのですが、しだいに周囲を巻き込んでことを大きくし、徹底的に一人の教師を追い込んでいきます。追いつめられ、心の病になって辞職された教師を、私は何人も見てきました。
 小学校の教師で、保護者から攻撃のターゲットになりやすいのは、二十代と五十代の女性の教師です。
 二十代の教師は、「まだ子どもを育てたことがないくせに、何がわかるの」
 五十代の教師は、いまの親世代と価値観が合いません。「そうは言ってもお母さん」などとつい説教口調になってしまうため、反感を覚えるケースが多いのです。学級経営でも、教条主義になりがちで「特例」を認めるのが苦手なため、子どもを追いつめてしまいやすいようです。そこで保護者から「感覚が古くて、頭が固いから、いまの子どもに対応できていない」などと言われてしまうのです。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)

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