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子ども指導のバリエーションを考える

 私が好きな家本芳郎先生という方がおられます。今は現役を引退されて生徒指導などの評論活動をしておられる方なのですが、家本先生がよく「注意に注意」なんてことをおっしゃいます。
「“注意”に注意」とは、生徒指導といえば日本ではほとんどが注意だというのです。
 例えば生徒指導の先生が職員室の朝の打ち合わせのときに「○○という問題が発生しました。先生方、よろしくご指導ください」とこう言うわけですが、「よろしくご指導ください」の指導はほとんどが注意だというのですね。
 日本の学校教育は、注意以外の指導方法というものを開発してこなかったのだと、こんなふうにおっしゃるわけです。
 しかし、今は子どもたちが変わってきています。昔の子どもは、注意で指導になったのが、今の子どもたちは、注意だけでは動かなくなってきている。
 そこで、いろいろな指導のバリエーションを考える必要があるということを家本先生はおっしゃっているわけですが、これこそまさに援助的コミュニケーションの発想かなと思います。
 具体的に言いますと、家本先生は、指導にはこれだけのバリエーションがありますよとおっしゃっておられます。
 それは、説得する・共感する・教示する・指示する・助言する・模範を示す・励ます・ほめる・挑発する。挑発するなんていうのはおもしろいな、と思うのですが、指導というのはいろんなバリエーションがあるということです。
 家本先生のおっしゃる中でしばしば出てくるのが、ちょっと「ずらす」という発想です。あるいは、ユーモアの活用と言ってもいいと思うのですが、やはりユーモアというものはコミュニケーションにとって非常に大切なものかなと思います。
 1つだけご紹介しますと、家本先生が非常に印象に残っておられる出来事のようなのですが、少し読ませていただきます。
 「小学校5年生の時、朝礼での校長の話である。当時落書きをする子どもたちが出てきて、学校の便所や校舎の壁や、塀に男女の性器や性交図を描きまくっていた。その落書きをやめろという趣旨の注意だった」と。
 校長先生は何と言ったかというと、「この頃、学校のあちらこちらで落書きが書かれている。特に大砲やらお日様みたいな落書きが多いが、大砲やお日様の絵は画用紙に書きなさい」と言ったそうです。
 非常にうまいなと思ったのは、そのものずばりではなく、大砲やお日様という、先ほど申し上げた「メタフォリカル・アプローチ」、つまり比喩を使っているわけです。
 そしてもう1つは「禁止をしていない」ということです。別なものに書きなさいと言っているわけです。家本先生によれば、これで一発で落書きは止んだそうです。
 生徒指導ではもちろん直球で勝負しなくてはいけない時もあるわけですが、この「ずらす」という技法は、なにもいつもいつもストレートでなくても、時には変化球を使ったっていいではないか、という発想ではないかと思います。
(会沢 信彦:1965年生まれ、文教大学教授。教育相談・生徒指導、特に学校現場をはじめとするさまざまな対人援助場面における援助的コミュニケーションのあり方に関心を持っている)

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