教師にとってたいへんな時代に
読売新聞の2006年9月4日付の記事に、小学校6年生の女子が勝手に自分の机を動かして授業を受けていたことを教師が注意し、机を戻そうとしたところ、その子は従わずイスをけって怖い顔で向かってきたので、教師とほぼ同じ体格の子どもに対し、恐怖を感じたという教師の話がのっていました。
また、私が聞いた話ですが、ある小学校6年生の担任は、子どもたちから授業中に画鋲を投げつけられたり「アホ」「死ね」などのヤジを浴びせられたといいます。保護者会で惨状を訴えると「わが子を悪者にしている」と逆につるしあげを食うはめになってしまいました。
「(体罰はできないんだから)殴れるものなら殴ってみろ」といったような挑発や「教育委員会にいいつけるぞ」といった恫喝まがいの言葉が子どもから発せられることは、最近では少しも珍しくないのです。
こうした子どもの状況に教師として毅然と対応できないことは確かに問題ですが「体罰教師・指導力不足教師」といったレッテルを貼られることを恐れ、どうしていいのか分からず立ち往生してしまう教師も多いのが現実です。
これには、子どもばかりでなく「モンスターペアレント」と呼ばれる、無理難題を押しつけてくる保護者もそうした一因をつくっていることは否めません。
大事なことは教師をパッシングして自信喪失に陥らせることではなく、保護者も教師と一緒に子どもの教育について考えていくことです。そうした環境をつくっていくことが、学校全体の努力目標でもあると思います。
教師崩壊の根は複雑です。教師自身の人間性と指導力の間にある問題、社会性の不足、子どもや保護者への適切な対応力の欠如、教師としての自信喪失など、様々な側面があるには違いありません。
しかし、これらの裏には、ほとんどといっていいほど、そんな教師をサポートできない、あるいはしようともしない教育委員会の存在が潜んでいることもまた事実なのです。
(尾木直樹:1947年生まれの教育評論家。法政大学教授、中高教員等教育現場で20年を超えるキャリアを持つ、臨床教育研究所「虹」を主催している)
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