子どもの問題行動の本質はつながりだ、どう指導すればよいか
子どもの問題行動は、人とうまくつながれず、行き詰まっているところに行き着く。いじめも、人や家族とうまくつながれないイライラやわだかまりが、他の子に向かうことで起きる。少年院に来る子も同じだった。
子どもたちの見せるさまざまな問題行動は、人とうまくつながれない葛藤の表れであり、できるだけ早い段階でそこをすくい上げ、丁寧に見てあげることが大事である。いけない行動だけを見た指導で終わらせてはならない。問題行動は人とのつながりを学ぶ大事な経験であり、仕切り直しをするチャンスなのである。
私が関わった問題の9割以上のケースに改善が認められる一方で、なぜかうまくいかないケースがある。その違いの要因を探っていくと、教師や親の関わり方に同じ共通点があることがわかってきた。
いい方向に変わっていくケースというのは、教師にしても親にしても、自分自身を柔軟に変えていける場合だ。
自分自身の視点のズレに気づき、視点を切り替え、新しいスタンスで動いていくことができる。子どもの問題行動の意味を理解し、子ども目線で一緒に考えられるために、子どもとつながるのも早い。そこが安心の居場所となるために、改善がスムーズなのだ。
一方、なかなか変わらないケースは、自分のこれまでの見方にとらわれて、どうしても切り替えられない場合である。
いけない行動という視点から抜けられず、問題の意味や背景を踏まえて、理解しようとすることができない。「そんなことしても、どうせ無駄」「変わりっこない」と最初から決めてかかっていて、日々の関わりもこれまでと同じ対応になる。「やっぱり変わらない」と嘆いてしまう。
頑なに自分の経験則にとらわれ、視点が切り替わらないと、こう着状態が延々と続くことになる。しかし、関わり方のささいな部分を変えただけで、翌週から事態が動き始めたりする。
かたくなに動こうとしてくれなかった人でも、何かをきっかけにストーンと腑に落ちると、視点が切り替わる。すると、子どもも変わり始める。こんなことで、変わるのだと初めて納得してくれる。
周囲の大人のつながる力が問われているということだ。結局、問題改善のために何が一番大切かといえば、私たち大人が、子どもの問題を通して子どもと共感的につながり、共に考えていける関係になることなのである。
それだけで、問題の半分以上が改善するといっても過言ではない。なぜなら、それこそが、子どもが安心して育つ環境になるからである。
子どもが育つのは、安心と信頼の土壌の上である。自分を理解してくれる周囲の大人に見守られる中で、初めて足元が定まり、自分らしく育っていけるのだ。そんな大人たちの中で、つながり方も学んでいく。
いじめ、不登校、ひきこもり、虐待、自殺といった問題は、どれも、うまくつながれない子どもの叫びであり、それはそのまま私たち大人が抱える問題の表れなのだ。
子どもの問題を通して、私たち大人が自分の問題として受け止め、子どもに寄り添う中で、共に成長していけたらと思う。
周囲の大人がその子を見る視点や意識が変わったとき、子どもが育ち、生まれ変わることができるのである。
(魚住絹代:1964年生まれ、大阪府教育委員会スクールソーシャルワーカー。1982年法務教官となり、以後、福岡、東京、京都の少年院に12年間勤務。非行少女の立ち直りに携わる。2000年に退官後は京都医療少年院で音楽療法の講師となるかたわら、2002年から、大阪府の公立小・中学校に、スクールサポーター、家庭教育サポーターとして勤務。子ども、家庭、教師の相談支援をしている)
| 固定リンク
「教師と子どもの関係づくり」カテゴリの記事
- なめられる教師となめられない教師はどこが違うか、教師が心がけたいこととは 桶谷 守(2021.06.10)
- 教師の遊び心が子どもとの距離を縮める 斎藤 修・篠崎純子(2021.06.02)
- 子どもたちと人間関係が築けない教師の要因とその改善方法 山口菜穂子(2021.05.26)
- 教師が子どもから信頼されるには、どのように接すればよいか 関根正明(2021.05.19)
- 生徒と信頼関係をつくるうえで大事なことはなにか 杉田雄二(2021.04.24)
「問題行動の指導」カテゴリの記事
- 授業を妨害する子どもにどう対応すればよいか(2021.02.04)
- 子どもたちのトラブルを予防するために、子どもたちにどのように学習させればよいか(2021.02.02)
- 問題行動を起こす生徒に「知らないふり」や「ものわかりの良い態度」はしない方がよい(2020.11.19)
- 校内で金品が盗まれたとき、どう指導すればよいのでしょうか(2020.11.15)
- 問題を起こす小中高校生や少年院の子どもたちと接してきてわかったこととは(2020.07.20)
「子どもと向き合う」カテゴリの記事
- あなたは教師として、子どもたちの言葉や思いの本質を聴き取る力がありますか(2020.05.03)
- 「お前は絶対に必要な人間なんだ」と言われれば、そこが子どもにとって安心して過ごせる居場所になる(2017.12.18)
- 子どもと関わるときに、してはいけないこと、すべきこととはなんでしょうか(2017.12.05)
- 荒れたクラスの子どもたちと向き合うには、どうすればよいか(2016.08.18)
- まるごと、その子と向き合えるか(2015.01.13)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント