私の学級には恐怖はない、静かで礼儀正しい安らぎの場所である
今ほとんどの教室は、恐怖によって管理されている。問題は、多くの教師たちが教室の秩序を保ちたいと願うあまり、秩序を保つためなら何でもするところにある。
「結果が手段を正当化する」という考え方は、今日、子どもたちへの対応の中心にあるからだ。ときに教師たちが直面している、手の施しようがないほど悲惨な状況を考えれば、しかたがないと思えなくもない。
教師は恐れている。かっこ悪いこと、子どもたちに好かれないこと、言っても聞いてもらえないこと、生徒が自分の手に負えなくなることを。
生徒たちはもっと恐れている。叱られること、恥をかかされること、級友たちの前でバカみたいに見えること、悪い成績をとること、親の怒りを買うことを。
これは教育界にいるすべての人に影を投げかけている問題である。学級運営の問題なのだ。
新任のころ、私も、学校がはじまる最初の日に子どもたちを威嚇する計画を立てた。私がボスであることをはっきりわからせたかったのだ。同僚の何人かも同じことをした。私たちは、子どもたちに秩序を守らせることに成功したと思い込んでいた。
だが、正直になろう。いくら効果的であっても、手段を選ばないやり方は、教育的に見て正しい方法だとはいえない。もっとじょうずなやり方があるはずだ。
ある日、優れた教師が語っているビデオを見た。彼は、教えるときやしつけをするときには、つねに子どもの立場に立って物事を見、教育手段の近道として恐怖を用いてはいけないと言っていた。
実際、その後の教員生活を通して、教室の雰囲気を改善すれば子どもたちをいろいろなことに挑戦させやすくなることを知った。恐怖のない教室をつくりあげるのは簡単ではない。何年もかかるかもしれない。しかし、やってみる価値はある。
私たちは、子どもたちがよりよい人間になるのを助けてやるべきなのだ。
今の私の学級には、恐怖はない。私の教室を訪れた人がいちばん感心するのは、子どもたちの学力でも、私の授業の仕方でも、手際よく飾られた教室の壁でもない。クラスの雰囲気に感嘆するのだ。静かで、信じられないぐらい礼儀正しい。安らぎの場所である。
(レイフ・エスキス:UCLA大学院卒、米国の教育を根本から変える力を秘めた小学校教師として注目されている。ロサンゼルスの貧しい移民家庭の子どもたちが多く通う小学校のクラスを22年間受け持ち、学力を飛躍的に伸ばし、品格のある子どもを育て、教師として初めて、アメリカ国民芸術勲章を受章)
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