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授業技術に気をとられ、心から授業を楽しんでいない教師に教わっても、生徒は楽しくない

 私の場合、授業のスキルを身につける上で、塾講師としての経験がとても役立った。
 学校の教師と違って、塾や予備校は人気のない講師が生き残れないシビアな世界だ。しかも子どもたちは学校で朝から授業を受け、疲れて家に帰ってからまた塾に来るわけだから、よほど授業が面白くなければ人気は出ない。
 私自身は、塾でナンバーワン講師になるぐらいでなければ「母校の教壇に立つ」という夢を追う資格はないと思っていたので、必死に授業のやり方を研究したものだ。
 最初は「オレの授業は面白いはずだ」という自信があったのだが、最初の評価は「最低」だった。それで板書の練習を始め、かなり字がきれいになったのだが、それでも評価が上がらない。
 悩んだあげく、私は生徒に人気の高い講師たちの授業を聞きに行った。「学ぶ」は「まねぶ」だ。人の良いところはどんどん盗んだほうがいい。たしかに彼らの授業は面白かった。生徒を引きつける魅力が確実にある。
 何が良いかというと、みんな授業の導入部分がうまい。まったく授業と関係なさそうな無駄話から入るのだが、気がつくとそれが授業の本筋とつながっている。
 また、授業中の間の取り方も参考になった。塾の授業は二時間ぶっ通しで行われるから、どこかで息抜きタイムを用意しないと生徒の集中力が持たない。私は最初から最後まで全力で精一杯やっていたから、そういう余裕を持てなかったのだ。
 それがわかったので、寝る時間も惜しんで授業の導入部を考え、間の取り方を工夫し、さらに生徒を笑わせるためのギャグを研究した。
 もちろん、授業の本筋である教材研究も怠らない。日本中の問題集に目を通して、教え方を考えた。
 ところが、それでも塾の評価は「まだまだ」であった。そのとき私は完全にすねてしまった。
 しかし、そこで私はようやく自分の問題点を悟った。私はそれまで、生徒の顔色をうかがいながら授業内容を分析することに精一杯で、自分自身が少しも授業を楽しんでいなかった。
 技術にばかり走って、心から授業を楽しんでいない人間に勉強を教わっても、生徒は楽しくないだろう。ミュージシャンが演奏を楽しんでいなかったら、観衆がそれを楽しめるはずがないのと同じこと。
 生徒が私のやる気をそいでいたのではなく、私が生徒のやる気を奪っていたのである。そう気づいて授業を楽しむようになってから、塾での私の評価はどんどん上がっていった。
(
義家弘介:1971年生まれ、高校で退学処分となった不良が、北星学園余市高校の教師となり活躍する。後に横浜市の教育委員、教育再生会議担当室長を経て国会議員となる)

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