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保護者からのクレームにどう対応すればよいか

 クレーム対応は多くの時間がとられるほか、怒りなどの保護者の感情に長時間さらされるために、教師の精神的負担は非常に大きい。
 クレームから上手に逃げる方法を探るのではなく、クレームにより、学校の運営を改善し、より良い学習環境を子どもたちのために作っていく学校であることを示すことが重要である。
 クレーム対応は、保護者の不満や怒りを受け止めるところから始まる。
 初期段階で重要なのはクレームを入れようと思いに至った事実関係の確認である。保護者が子どもの都合のよい説明を鵜のみにした場合もある。事実関係がある程度把握できたら、保護者の要求を確認する。
 回答を求めてきた場合は安易に回答するべきでない。いらぬ期待や誤解を抱かせ、紛争を拡大させるおそれがあるからである。
 紛争を拡大させないためには、
(1)
むやみに非を認めないこと
 クレームの勢いに押されて安易に非を認めたがため、取り返しのつかないこじれた紛争にしてしまう可能性がある。初期段階では、事実の確認が先で、非があるかの判断は後ですべきものである。
(2)
謝罪する場合は、その謝罪の対象・範囲を明確にする
 クレームを入れてきた保護者に、一度も謝罪の言葉を述べずに電話を切るというのは難しい。初期段階では事実関係が不明なのであるから、事実について非を認めるものであってはならないが、クレームの電話を入れなければならないような不愉快な状況に陥ったことについて謝罪するのである。
(3)
中途半端に意見を言わない
「このようなことが起きてどう思うのか」と問い詰められることが多い。保護者の意見に沿わない意見を述べれば当然反発を招くであろう。事実関係が分からないうちに意見を述べることは紛争解決に役立つわけはない。
(4)
窓口を一本化する
 紛争解決のためには、交渉の窓口となる者を決めなければならない。
 担任は窓口としてはならない。つながりが深すぎるからである。校長は学校の最終責任者である。紛争の最終時点で関与するのはかまわないが窓口にはなじまない。校長をだせば、ここを突破すれば自分の言い分がとおると勢いを増すことが多い。窓口にふさわしいのは学年主任あたりとなるのではないかと思われる。
 窓口が決まれば、誰がクレームに対応するのか、責任の所在を内外に示すことになり、クレームに取り組みはじめたことを示し、保護者に安心感を与える。
(4)
チームによる対応
 小さなクレームであっても、学校全体の問題として、チームを組んで対応すべきである。同僚が一緒に対応してくれると、職場を信頼することができ、前向きに対応する動機へとつながっていくであろう。相手方から見ても、学校の問題として対応する姿勢を示すことは、少なくとも問題に対して真摯に取り組んでいることを伝えることができる。
 クレームの対応は、お互いの言い分を整理し、妥協点を見いだし解決することをめざすことにある。
 クレーム対応がうまくいかなかった事例を見ると、保護者に理解してもらおうとしすぎたケースが多い。学校側の対応を理解してもらおうという姿勢は初期の対応では重要である。しかし、保護者と理解し合えないことが判明すれば、保護者に理解させることはできない。
 クレーム対応は相手次第であるから、保護者の個性に左右され、客観的な解決方法はない。その場その場で、より適切と思われる方法を選択していくことが重要である。
(
堀切忠和:弁護士。日本大学准教授を経て九段富士見法律事務所)

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