過酷な勤務と理不尽な教師パッシングで教育は危機に陥っている
佐藤学は、いまや日本は教育の危機に陥っていると述べている。
この20年間、教師に対する理不尽なバッシングが繰り返されてきた。そのため、学校や教師は親や社会の不満と非難の対象となり、教師は防御的になって社会的に孤立するという不幸な状態が続いている。
教育は教師に対する信頼と尊敬がなければ、納得のゆく成果を得ることはできない。教師の尊厳と専門性が傷つけられている事態は深刻である。
教師生活の危機は、教師の多忙化に現れている。2006年に実施された文部科学省の勤務実態調査によれば、小中学校の教師の一日あたりの就業時間は10時間45分で、残業時間は40年前の5倍になっている。
勤務時間で子どもと関わる時間は6割に過ぎず、休憩と休息は一日わずか8分という実態である。連日3時間近い無報酬の残業が続き、一日平均30分の持ち帰り仕事をこなし、しかも土日は部活動の指導に追われるという教師生活は精神的にも肉体的にも限界を超えている。
近年、都市部を中心に定年前に退職するベテラン教師が急増している。これら定年前に退職する教師のほとんどは、硬直した学校、教師に無理解な親や社会、学校の改善に無力な教育行政に絶望して教職を退いている。
最も信頼し希望を託すべき教師が大量に退職している現実こそ、教育の危機の中心というべきだろう。
(佐藤 学:1951年生まれ 東京大学教授を経て学習院大学教授 学校を訪問(国内外2800校)し、学校現場と共に学び合う学びの改革を進めている)
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