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生徒の言い分を聞いて説得するやり方では、生徒が自分を律することはむずかしい

 私はいつもチャイムがなり始めるとすぐに職員室を出る。見ると廊下には、一年生は一人も出ていないが、三年生はまだかなりウロウロしていて騒がしい。当然のことながら、一、二年の時の教師の対応の結果であると考えねばならない。
 教師が生徒の言い分をよく聞いて(カウンセリングマインドというやつだ)、やさしく対応してきたことが大きいだろう。学校のわく組みをハッキリ示し、それからはみ出たらきちんと叱り、学校での生徒としての生活の仕方を一つひとつ教えこんでこなかったからである。つまり、生徒を個人として尊重するということを第一とし、学校での生徒としての生き方をきちんと教えてこなかったということなのだ。
 なにか問題を起こし時、どうしてそんなことをしたのかやさしく聞いてやり、そのあとでじっくり説得しようとしてきた結果、生徒は自分を律することができなくなったのである。
 中学生は自分の欲望がふくれあがる時期である。教師がそれを抑えてやらなければ、どうしていいかわからず欲望をもてあますことになるだろう。欲望がふくれあがる理由などなんとでもつけられるから、その理由をわかってやってもまったく意味がないのである。
 生徒の言い分を聞いてやり、ゆっくり説得するというやり方では、生徒が自分を律することはむずかしい。大切なのは拒否してやること、だめだと言って抑え込んでやることなのである。
 問題を起こしたら、自分で責任をとらせる方向に向かわせずに、原因と考えられる心の悩みをときほぐしてやさしく保護してやることが大切だと考える教師が増えてきた。しかし、そのようにすればするほど、生徒はグニャグニャになっていくのである。
 自分でどうするか考えさせて決断させることのほうが大切なのだ。目標は自立である。自分の行動に対して一つひとつ自分で責任をとらせることが大切なのだ。
(河上亮一:1943年東京都生まれ、埼玉県公立中学校教諭、教育改革国民会議委員、日本教育大学院教授を経て、埼玉県鶴ケ島市教育委員会教育長、プロ教師の会主宰)

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