算数科:学ぶ意味がわかると授業態度が変わり学級崩壊がなくなった
今泉 博はつぎのような方法で学級崩壊をのりこえていった。
子どもたちは授業では、一応計算などはできるが、意味がわかっていない子が多いのです。
そこで、学級が崩壊し「いじめ・暴力」などで荒れている状況をなくしていく取り組みを強めながら、もう一方では、授業を大切にしていくことが学級崩壊をのりこえていく方法だと思いました。
子どもたちが、学校で学ぶ楽しさや、学ぶ意味がわかるようになれば、授業中の態度も変わっていくにちがいない。そんな気持ちで授業にのぞみました。
たとえば算数では、5年間の学習の復習に取り組みました。1週間ほどかけました。たしたり、ひいたりできるのは、どういう意味か。かけ算やわり算とはなにか。分数・小数の源はなにか、どこがちがうのかなどを、具体的なこととのつながりを大事に、学習しなおすことから、6年生の算数の学習を始めました。
分数については、次のようなことを学習しなおしました。
まず、私たちのまわりには、石やみかんなどのように、1個2個・・・と数えられるものと、水や空気のように、1個2個・・・と数えられないものがあることを、子どもたちとのやりとりの中で押さえました。
自然を数えられるものと数えられないものに分けてみるというのは、算数はなにを基礎に成り立っているものかを知る上で、きわめて重要です。1個2個と「数えられないもの」を「数える」には、どうすればよいか。子どもたちは、なにか容れ物を使えばよいことに、気づきました。そこで人間は、容れ物の大きさを決めておくことが必要であったこと、それが単位であることなども、子どもたち自身が発見するという形で学習を進めていきました。
子どもたちは、算数もまた実際の自然・生活から生まれ、人間が矛盾にぶつかりながら、創造してきたものであることを知って、算数に対する見方を変えていきました。抽象的と思われていた算数が、実は具体的なものに根ざしていることに、新鮮な驚きを感じているようでした。
ある量の水を1リットルマスで測っていくと、往々にして「はんぱの量」が出てきます。それをどう表すかによって、小数と分数に分かれたこと。
小数は、はんぱの量に関係なく、はんぱが出るたびに容れ物を小さく(10等分)して測っていくのに対して、分数は「はんぱの量」が1リットルにいくつで「しきつまるか」によって表すこと。たとえば1リットルにちょうど3つ分でしきつまるような場合、それを1/3リットルと言うこと。
すでに習っているはずの少数・分数でしたが、その生みの親は連続量であり、小数と分数は兄弟であることを学んだことは、新たな発見だったのです。
分数を理解することのなかには、算数の基本になるものが豊富に含まれています。その意味で、分数などについて、深く学んでおくことは、小学校高学年の算数にとっては、不可欠です。
(今泉 博:1949年生まれ、東京都公立小学校教師を経て北海道教育大副学長(釧路校担当)、「学びをつくる会」などの活動を通して創造的な授業の研究・実践を広く行う)
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