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読み聞かせで子どもの心を解放させることが急務

 読み聞かせで子どもの心を解放させることが急務である。
 東京のある小学校の保護者の方から「実は六年生なのですが、授業が成立しないので困っています。本を読み聞かせすると、いいと多くの人から聞いているので、ぜひ来てほしい」というお願いがありました。少しでもお役に立てるものならと、伺いました。
 六年生三クラスに「3びきのかわいいオオカミ」(ユージーン・トリビザス)、「おさる日記」(和田誠)、「うごいちゃだめ!」(エリカ・シルヴァマン)の3冊を読み聞かせました。
 「おさるの日記」は、しんちゃんという四年生の日記。しんちゃんはお父さんから土産に子ザルをもらいました。ところが、子ザルの毛が抜け始め、テレビのチャンネルを変えられるようになり「しんちゃん!」と名前を呼ぶようになり・・・・。
 そして、日記の最後は、お父さんとお母さんのひそひそ話。「ふしぎなこともあるもんだな」とお父さん。「ほんと、それにこんなふしぎなことが二度もおきるなんて・・・・」のお母さんのことばに、子どもたちは「えーっ」と叫びました。
 三冊を読みながら、クラスの子は? と子どもたちの様子をよくよく見たのですが、子どもたちは、三冊の本に対して、それぞれ豊かな反応を示し、作品の世界を十分楽しんだようでした。
 一週間ほど後、「うちにも来て欲しい」という連絡がありました。やはり六年生。聞けば、授業中、子どもたちがいっさい声を出さない。教師の発問にどの子も答えないクラスです。一方に行って、こちらを断るのはよくないと思い出かけました。
 二クラスの内、一方のクラスの男子数名が、隣の子と話をしたり、ボソボソ独り言をいったり、前の子の体をつついたりして、話の世界を拒否しようとしているようです。
 さきの学校と同じ本を読んだのですが、この子どもたちは、「3びきのかわいいオオカミ」が、どんなに丈夫な家を造っても悪いブタにこわされてしまうあたりから、話にのってきました。そして読み終わった時、「ああ、おもしろかった!」と、手を大きく上にあげました。
 どこへ行っても、どの子どもたちも、わたしの読む話をとてもよく聞いてくれます。「本を読んでもらったりすることが、どうしてこうも好きなのか」と、考えさせられるのです。
 当然なことですが、子どもたちは、つぎつぎにくりひろげられる話の様相にひかれるのだろうと思います。自分の近辺にはない、扉の向こうの世界。できればそうあって欲しい世界。しかもそれが非常にわかりやすく描かれている。その世界を生きている登場人物と共通体験をする。そのことがおもしろいし、楽しいのだと思います。
 「本をよんでいるとねえ、はなしの中にじぶんがはいって、あそんでいるってゆうきもちになって、たのしいの」という2年生の子のことばがそのことを適格に表現しています。
 「コッケモーモー」(低学年用)は鳴き方を忘れてしまったおんどりの話です。子どもたちは、おんどりの誤った鳴き声に大笑い。ところが夜中、きつねが出現。子どもたちは急に静かに息をつめて体をこわばらせます。
 おんどりは「コッケーモーモー!」と大声をはりあげ、きつねを追い払います。牛、豚、ひつじたちにほめられ「コッケコッコー」と声高らかに鳴くという話です。終わると、ほっとし「やった!」と手を叩く子がいます。
 この高揚、緊張、安堵という、こころの揺れがたまらなく楽しいのです。この揺れが大きいほど、子どもたちの喜びは大きくなります。
 今の子どもたちの心は、異常といってもよい状態になっています。いらいら、むしゃくしゃ、不安感でいっぱいなのです。かつて、子どもたちは群れて遊んでいました。この群れの中で、他と深くかかわり合い「ことばと生きる力」が育てられたのでした。
 ところが、今日、いわば孤独の生活を自ら選んでいます。誰かと群れを作っても、ただそのような形をとるに過ぎず、他と深く関わることを拒否しています。
 楽しい話の世界で、登場人物と共にさまざまな体験をすることによって、この子どもたちのこころを解放させてあげることが急務です。
(
小松崎 進:1925年茨城県生まれ、元東京都公立小学校教師、この本だいすきの会代表)

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