荒れた学級の指導はどのようにすればよいか
話がきちんと通る関係をつくらなくてはならない。子どもに話をするときは、教師は静かな状態をつくってから話し出すのが鉄則だ。
子どもたちがザワザワしているのに、教師がそれにかぶせて話し続けているのはよくない。教師はザワザワに対抗するため、大きな声を出す。それに呼応して子どもたちはいっそうザワザワする。教師の声が一段と大きくなる。気がつくと、教師の声を聞いている子は、数名という状態になっている。
「声を重ねてはいけない」ことをまず教師が示し、次に子どもたちにも小刻みに何度でも指導すべきだ。そして静かな状態を褒めることだ。
荒れた学級に指示を出す際は「~してください」という語尾では弱い。「~してくれますか?」とか「~してほしいと思います」も、子どもをたるませ、つけあがらせる。
「~なさい」、または「いいから、まずやれ!」など言葉を短く、一回で指示する。濁った言葉やだらだらした教師の言葉が、学級を荒らすと心得たい。
注意されても、子どもたちは人に迷惑をかけているということへの自覚などもっていないのだ。だから、やがてまた騒ぎ出す。
注意を与えたら、一応子どもが静かになったとしても、それで先に進んではいけない。必ず注意に対する返事をさせることだ。程度によっては、他の子に詫びさせることだ。
教師の注意に対して返事をさせ、他の子に迷惑をかけていることへの侘びをさせることによって、自覚が一段と深まる。返事や侘びの言葉に、短くにっこりとしてやり、すっと先に進む。これにより心地よいリズムができてくる。
反発が起きた場合でも、圧倒的な論理と情報量で子どもを説得する用意がほしい。「先生にはかなわないや」と思わせたい。
大きな声を出すなど派手に勝ってはいけない。静かに勝つのが原則だ。小さな戦いに素早く静かに勝つことだ。クラスの子どもたち八割(2・6・2の法則を活用)の子を常に教師の味方につけるようにする。
例えば「今、○○くんは『そんなの勝手じゃんか』と言ったね。みんなは、これどう思いますか? 勝手だと思う人は手を挙げよ。それは間違っていると思う人は手を挙げよ。ほう、学級では○○くんと△さんらだけが勝手派で、残りは先生と同じいけない派だ。○○くんと△さんのおうちの人にも聞いてみることにしようか? それとも学級便りに書いてみようかな」と、こんなふうに、静かに戦うのである。反発にたじろいたり、過剰に反応してはいけない。
荒れのキーマンになっている子も、褒められればうれしい。積極的に何か仕事を頼む。少しでも教師の言うことに従ったなら、すかさず褒めることだ。キーマンと、いっぱい糸をつなぐのである。
学級を荒らしてしまう教師は、ここをカン違いする。いわゆる良い子どもとばかり話をし、やんちゃたちは放っておく。彼らはさびしくなって注意を引こうと、またやんちゃを繰り返すのである。
(横藤雅人:1955年北海道生まれ、札幌市立小学校校長を経て北海道教育大学招聘教授)
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