子どもたちの人間関係の能力を高める方法
子どもたちが起こす問題行動の背景として、「人間関係の能力の低下」が指摘されている。
この人間関係能力は、体験を通してしか、獲得できないのである。
従来であれば、子どもたちは遊びを通して身につけていった。しかし、集団での遊びが減っているので、学校が人間関係を育む場として重要な役割を果たすことが期待されている。
そのための有力な教育方法として注目されているのが、「エンカウンター」なのである。「エンカウンター」が、子どもたちの人間関係能力を高めるからである。
「エンカウンター」とは、ホンネとホンネの交流、親密な人間関係のことである。
「構成的グループ・エンカウンター」といわれる方法は、グループで「エンカウンター」を体験することを目的とした教育方法である。構成的と呼ばれるゆえんは、リーダーがエクササイズ(練習課題)と呼ばれるさまざまな体験学習のメニューを提示するところにある。
それぞれのエクササイズは、自己理解、他者理解、自己受容、自己主張、信頼体験、感受性などを、体験を通して学ぶことをねらいとしている。対象者の発達段階に合わせて、多種多様なエクササイズが開発されている。
エンカウンターは遊びやゲームの要素を多分に持っているが、単なるゲームとは異なる。それは、エンカウンターがシェアリング(ふり返り)を含むからである。
ゲームであれば、楽しかっただけでもよい。しかし、エンカウンターでは、エクササイズを通して「何を感じたか」「どんなことに気づいたか」をグループで話し合う。このシェアリング(ふり返り)が自己理解、他者理解を促し、成長を促進させると考えるのである。
エンカウンターは授業や学級活動、保護者会、職員研修などさまざまな場面で効果があることが報告されている。
つぎにエクササイズの例を示す。
「サイコロトーキング」
1 目的:あるテーマについて話したり聞いたりすることで、他者理解を深める。
2 準備:サイコロ
3 手順:
(1) サイコロの目によって話す内容を決めておく。
1の目は「うれしかった話」、2の目は「困った話」、3の目は「恥ずかしかった話」など。
(2) クラス全員が半円形になって座る。
(3) 一人ずつサイコロを振り、出た目の内容について話をする。どうしても話が思い浮かばなければ、もう一度振ってもよいことにする。
(4) 話し終わったら拍手をする。何かコメントがあれば発言してもよい。
(5) シェアリングで、いちばん心に残った話しを発表させる。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)
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