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舞台の幕開きから三分間が演出家としての勝負だ

 演出家の仕事について、世界的な演出家の蜷川幸雄はつぎのように述べている。
 新しい芝居を創るためには、人間一人の力はそんなに強くないから、他者の想像力や、自分の得手ではないものとも激しくぶつかり合わないかぎり、新しいものは生まれないと感じていた。
 その新しい何かを発見し、絞り出すためには、過酷な条件を自分に課すか、あるいは他者から課せられるか、そのいずれしかないのです。
 自分の中に何かを生み出す自己変革は、大変に難しい。何かにぎりぎり追いつめられたり、何かの制約があって初めて広がる可能性を、僕は経験して知っていましたから。
 劇団を解散し、新たな演出の仕事をもらったときは、自ら退路を断って、裸足で稽古場の中を走りまわり、孤軍奮闘した。本気で稽古していない俳優には怒鳴ったり、灰皿や靴を投げ、テーブルをけり、心理的な揺さぶりをかけた。
 僕は観客を、幕開けと同時に一瞬にして、日常から非日常の世界へかっさらってしまいたいんです。だから、それまでの芝居になかった仰天するような舞台美術や音楽、そして斬新な演出法で、お客さんを楽しませることに腐心しました。
 僕がよく言っていたのは、幕開きから三分間が、演出家としての勝負だと。劇場まで足を運び、お金を払って観てもらうお客さんに、満足していただくのは最低のルールだろうと思うのです。だから、観客の心を冒頭から一気にひきこもうとするわけです。
 頭で考えて演出プランを立てると、僕の場合、ちっちゃい映像が浮かんできて、どんどん世界が小さくなってしまう。この方法は慣れているから楽に出てくるけれども、変化がない。
 2005年頃から、いろんな勉強だけはしておいて、溜めておいたもので瞬間的に決めるようにしています。即興で、その場で浮かんだことを指示して、俳優の演技も見ながら直していく。あるいは、読み合わせをして俳優がどんなことをやりたがっているかを汲み取りつつ、瞬間で組み立てるようにしています。
 常に新しい演劇、境地を求めながらやっているわけです。
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蜷川幸雄:1935年生まれ、世界的に有名な演出家。桐朋学園大学短期大学部学長。「王女メディア」「NINAGAWAマクベス」などの斬新な演出が話題となる。ベルリンでオペラ演出をおこなうなど国際的に活躍。歌舞伎座公演「NINAGAWA十二夜」の演出で菊池寛賞。朝日舞台芸術賞特別大賞,読売演劇大賞・最優秀演出家賞。22年文化勲章)

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