素直な心になるとあやまちのない適切な判断をくだせるようになる
素直な心というものは、ものごとのありのままの姿、本当の姿、実相というものが見える心ではないでしょうか。
実相が見えれば、あやまちのない適切な判断がくだせるようになってくるわけです。
素直な心でそういう適切な判断をお互いがくだし、適切な行動を営んでいくならば、この社会やお互いの身のまわりの姿というものは、スムーズな、和やかな、好ましいものとなっていくのではないでしょうか。
お互いは日常、ややもすると、いろいろな色ガラスやゆがんだガラスをとおして向こうを見ているような面があるのではないでしょうか。
たとえば、自分なりの知識という色ガラス、自分の欲望なり利害得失という色ガラス、一つの主義思想という色ガラス、というようなさまざまの色ガラスやゆがんだガラスをとおしてものごとを見、考えている場合が非常に多いのではないかと思います。
それはお互い人間としてやむを得ない面もありましょうが、しかしそういった自分なりの意見とか感情にとらわれてしまっては、本当の色、ありのままの形というものはやはり見えないと思います。たとえ自分では正しく見ているつもりでも、実は色ガラスをとおして見ていたということにもなりかねないでしょう。
今日のわが国においては、社会の各分野の活動において、またお互いの日々の生活の各面において、いろいろとあやまちやゆきちがいが生まれてきています。そしてそれらがお互いの悩みや苦しみ、対立や争いをいっそう深めている面さえあるように思われます。
こういう面があるということも、一つには、お互いが素直な心でない色ガラスをとおして見、判断をくだし行動しているという姿が少なくないからではないでしょうか。
もしそうであるとするならば、やはりそのままではいけないと思います。お互いに素直な心を養い高め、ものごとの本当の姿を見ることができるようにつとめなければなりません。
じっさい、お互いが素直な心になるならば、しだいに色ガラスでなく無色透明なガラスをとおしてものごとを見るという姿にもなってゆくでしょう。
したがってその判断はものごとの実相に基づいた判断ともなり、あやまちのない適切な判断となってくるわけです。
(松下幸之助:1894-1989年、パナソニック創業者、経営の神様と呼ばれ、日本を代表する経営者)
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