子どもには二つの顔があることを知った
子どもには、学校用と学校の外用とふたつの顔のあることを知った。子どもには、別の顔があるということだった。
○○という女の子がいた。ともかく陰気で暗く、ひがみっぽく、だらしなく、そのくせ、あちこちと噂をふりまいて事件をおこしていた。家庭訪問のあと、公園を横切って帰ろうとすると、砂場から楽しげなはずむ声が響いてきた。
みると、○○が幼い妹と子犬を連れて、砂場であそんでいるのである。「だめよ。ほら、汚れるでしょ」と、まるで母親のような口ぶりで妹を世話しながら、いっしょに砂遊びしている。○○とは犬の話をすれば、素顔を引きだすことができた。
素顔だと思っている顔はじつは仮面ではないのか。どうしたら学校のなかで素顔を引きだすことができるのだろうか。
よく見ていると、それは遊びのなかだった。遊んでいるとき、子どもたちは我を忘れて、ほんとうの自分の顔に戻る。これだと思った。その発見から、遊びを奨励し、暇をつくっては子どもといっしょに遊ぶことにした。
遊びのなかで、子どもたちはほんとうの自分を表現し、教室ではわからない、子どもの新しい積極面を発見することができた。
(家本芳郎:1930-2006年、東京都生まれ。神奈川の小・中学校で約30年、教師生活を送る。退職後、研究、評論、著述、講演活動に入る。長年、全国生活指導研究協議会、日本生活指導研究所の活動に参加。全国教育文化研究所、日本群読教育の会を主宰した)
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