先生になりたい人は、人間関係の作り方をしっかりと身につけること
これから教職をめざそうとしている学生たちに心がけてほしいと思うのは、人間関係の作り方をしっかりと身につけることだ。教師の仕事は他人と信頼関係を築く仕事だと言ってもいい。
出会った子どもたちの人間性を理解し、相手にも自分のことを理解させるところから、教育は始まる。震えている子どもを温めてやりたくても、それができなければ彼らに近づくことさえできないだろう。
それに、教師集団での仲間同士の信頼関係が築けること。自分の意見をきちんと主張し、理解してもらえるだけの能力がなければならない。
しかし、そういう人間関係作りの方法は、大学では教えてくれない。各自が日常生活における実践を通じて鍛えていくしかない能力だ。
ところが、今の学生たちに一番足りないのもまた、日常生活での濃密な人間関係であろう。インターネットや携帯電話で頻繁に他人とつながってはいるものの、そこで築かれている関係性はきわめて浅い。教師をめざすなら、たとえば仲間と真剣に議論する機会をもっと持たないとダメだ。もっと本気でケンカもしてほしいし、胸が張り裂けるような恋だってしてほしい。
そうやって、お互いがボロボロに傷つくような密度の濃い人間関係を経験し、それを乗り越えておかなければ、教育の世界ではとてもじゃないがやっていけない。
自分ではそれなりに厳しい人間関係を乗り越えてきたつもりでも、今の子どもたちはそれ以上に厳しく、深く、暗い闇の中で震えている。その暗闇と対峙し、子どもたちの震えを止めてやろうと思ったら、相当な覚悟が必要だ。そして、その覚悟の深さは、自分自身が経験してきた人間関係の深さに比例するのではないだろうか。
(義家弘介:1971年生まれ、中学生で不良と呼ばれ高校中退し家から絶縁される。里親の元で大学を卒業し、塾講師、北星学園余市高校の教師になりドラマ化され評判となる。横浜市教育委員、教育再生会議担当室長を経て国会議員)
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