学級崩壊させないために必要な教師のパワーとは
学級崩壊させないために必要な教師のパワーについて渕上克義はつぎのように述べています。
最近、学級崩壊と教師のパワーの関係が研究され、つぎのような結果がでています。
学級崩壊が発生しはじめる時点において、教師が子どもを指導する背景となる、教師の専門性パワー(専門的な知識能力や経験)、親近・受容性パワー、準拠性パワー(教師の人柄、魅力)、報酬性パワー(ほめ言葉や励まし)が弱いことがわかりました。
さらに興味深いことには、その後、教師は学級崩壊を防ぐために、強制性パワー(罰や叱責)や正当性パワー(教師としての地位を用いる)を中心とした管理的な方法によってまとめようとします。ところがうまくいかず、かえって専門性パワー、準拠性パワー、報酬性パワーがますます低くなり、結果として教師のリーダーシップは、子どもから受け入れられない状態に至ることが明かになりました。
さらに、つぎのようなことも示唆しています。
(1)専門性パワー、親近・受容性パワー、準拠性パワー、報酬性パワーがないと、教師が学級集団をまとめる力が弱い。いつ学級崩壊の兆しが見えても不思議ではない。
(2)専門性パワー、親近・受容性パワーが弱く、権威のみに依存する教師は、子どもとの良好な関係が築けないし、学級規範を維持する力が不足する。
子どもの発達に重要なパワーは、教師の専門性パワーと親近・受容性パワーです。
子どもと教師の間に相互信頼を成立させるためには、親近・受容性パワーがまず必要でしょう。さらに、さまざまな指導や助言に関わる専門性パワーが必要になります。
たとえ親しみやすい受容的な教師であっても、専門性パワーがなければ、目標に向かって集団をまとめることは難しいでしょう。ましてや、重要な指導の場面で子どもを十分に納得させることができるでしょうか。教師と子どもとの関係も決して良好ものとはいえないでしょう。
私は学生に、小学校から高校までに接してきた教師の中で、一番心に残っているのはどの教師かしばしば聞いてきました。
たとえば、授業が上手な教師、自分の将来の相談に応じてくれた教師、自分の考えを真剣に聞いてくれた教師、話題が豊富で聞いていてためになった教師、やさしいだけでなく厳しさも兼ねそなえた教師、子どもの立場にたって考えてくれた教師などは、いい意味で印象に残った教師の例といえるでしょう。
他方、授業がわからなかった教師、自分たちの意見にまったく耳をかさなかった権威的な教師、自分の能力などを自慢していた教師、えこひいきしていた教師、事あるごとに他のクラスや子どもと比較していた教師などは、悪い印象として残っている教師だと思われます。
総じて良い印象の残っている教師に対しては、専門性パワーと親近・受容性パワーを認めており、このようなパワーの使い方が上手な教師であったといえそうです。
(渕上克義:1959年佐賀県生まれ、岡山大学教授。集団や組織におけるリーダーシップ研究を行っている)
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