自分たちで考え、学んでいく子どもづくり
先生になり3年生の担任に。一生懸命に子どもにかかわるのだけど、教室はいつも落ち着きません。保護者会で「先生大丈夫ですか」と訴えられる始末でした。
なんとかしようと僕は、本屋で授業の手がかりを必死に探し、仮説実験授業の「たのしい授業」を立ち読みすると楽しそうな授業実践がたくさん載っています。すぐに、そのサークルに入りました。スライム作りを紹介され、すぐにやってみると、子どもたちは大喜びでした。
仮説実験授業では「授業の価値は子どもが決める」ことを前提としているので、授業が終わると子どもたちに5段階の授業評価と感想文を書いてもらうことが定番でした。この仮説実験授業のおかげで、僕は自分の実践を記録し、子どもの声に学びながら授業を改善することを学びました。
その後、長期研修の試験に合格し、1年間母校の大学で学ぶことになりました。ワークショップに興味を持ち、ワークショップを研究している新潟県高志小学校を訪れました。研究の仕組みはシンプルで
「先生が自主的に一人ひとりがやりたいことをする」
「お互いにやっていることをレポートにして持ち寄ってワークショップで紹介し合う」
「成果がでたものは、お互い取り入れ合い広がっていく」
というもので、コーヒーを飲みながら自由に語り合います。僕も参加しましたが、心地よく、やる気が満ちている職員室ってとてもすてきでした。教室だけじゃなく、職員室って大事だなあ。学校って変わると興奮しました。
職員室のチームワークづくりのために、小学校へファシリテーター(参加者の学習がスムーズに進行するように支援する人)に来てもらって研修をしたのです。そのファシリテーターの見事な進め方、振り返りの的確さ、人間的魅力に魅せられ、僕は子どもたちがどんどん動いて学び始め、伸びていく。そんなファシリテーターになろうとした。
吉田新一郎さんから、ライティング・ワークショップ(作家の時間)という、「子どもたちが本物の作家になったつもりで、たくさん書く」活動があることを教えてもらいました。僕は、これが教室の学びを変えると直感しました。
いいと思ったことは、すぐ試してみるのが僕の売りです。手ごたえは十分でした。子どもたちは書くことに没頭し始めました。書くことがクラスの中心になっていきました。卒業文集に載せる作文も、納得がいくまで5回も書き直す子が続出しました。僕はこの活動によって、子どもたちが主体的に情熱を持って学ぶ取り組みを体験しました。
その後、「自分たちで考えて、自分たちで学んでいく」子どもづくりをめざして、つぎのような活動を展開していきました。
(1)振り返りジャーナル
振り返りこそ学びです。授業、行事、帰りの会で、そのとき起きていたことを振り返って意味づけをする。学びそのものです。子どもたちも僕も毎日書きます。「続けていると自分の成長につながる」と実感している。
(2)ホワイトボード・ミーティング
質問する方法をカード使って練習し対話を深めることが身につくと、ホワイトボードに意見を書き、効果的に合意を形成する方法です。
掃除や給食の改善など、子どもたちが話し合いを進めていきます。聴くことが上手になり、無用な対立は減り教室が穏やかになります。授業などの話し合いが上手になり、学習に深まりが生まれます。
(3)読書へのアニマシオン
子どもの読む力を引き出すメソッドです。国語の授業の最初の10分間は読書です。読み聞かせでクラスにしっとりとした一体感ができる。
本の魅力を子どもたちに伝えることが僕の仕事だと確信、教室には本がいっぱいあります。
(4)教室リフォームプロジェクト
子どもたちがアイディアをだし、自分たちで教室を居心地良くする。それは自分も周りの人も笑顔にします。
(岩瀬直樹:1970年生まれ、埼玉県公立小学校教師。「学びの寺小屋 楽学」主宰。平成20年度埼玉県優秀教員表彰)
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