子どもの「学童期」(6~12歳)と「思春期」(12~20歳)の発育の特徴を理解し対応するには
(1) 子どもの発達「学童期」(6歳~12歳)
子どもは自分のスピードとやり方を大切にする。そして、子どもは自分らしくがんばる。そういったことに「大らかさと自信」を親や教師が子どもにつけさせるようにべきである。
そして、それを培うには、親や教師は子どもに有能感「自分には自分なりの力があるという感覚」を学童期に身につけさせることが何よりも大切である。
「有能感」を身につけさせ「勤勉性」を育成することが学童期の最大の課題である。
もしこの「有能感」を身につけそこなうと、深い「劣等感」を抱くことになり、これはこの後の人生を通して、重い苦しみとなって悩まねばならぬものとなりがちである。
「有能感」は学校でのみ得られるものではない。親は勇気を持ち英知を傾けて、子どもに、さまざまな体験をやらせてみて、子どもの内にある力が何かを探り、引き出すよう励ますことが肝要である。学童期ほど適切な時はない。
もう一つ、学童期である小学校高学年に「あなたと私」という仲間意識を育てることである。この時期に少しずつ、他者の喜びや満足や安定を自分のそれと同じように重要なものと考え始める。仲間とのつながりは社会性をやしなううえで大事な経験を積むことになる。
(2)思春期(12歳~20歳)
大人の身体になりながら、大人と認められぬ若者たちは、思春期という中間地帯を、悩みつつ、深り、歩んでいかなければならない。その時期、彼らは生まれて初めて「自分は何か」「これからどうなっていくのか」といった自分の存在を自分に問う。真の自分を求め確立していく。
思春期は性の成熟が進んでいき、ホルモン内分泌の動きによる性の衝動が若者たちをまどわせ、不安にする。
家庭から一般社会へと自己存在の場の拡大を迫られるし、依存的状況から独立的状況へとさまざまな困難な課題を抱かえる。
新しい安定した基盤を自己の存在の根底に見いだし、確立するまで、思春期は「不安」にぬりつぶされる。
思春期は安定した基盤を持たぬゆえ、自意識がむやみに強くなり、周囲に対する過敏性を極めて強いものにする。むやみに威張るかと思うと、深い劣等感に落ち込む。大人に対して親愛の情を持つかと思うと軽蔑的にふるまう。孤独を好むかと思うと集団に身を置きたがる等、全く相反する心情が、一人ひとりの若者の心の中にうずまいているということである。
また、ほんの少しのことで幸福の頂きに登るかと思うと絶望のどん底に沈み込むといったように、若者の感情がとかく両極端に動きがちである。
最後に社会的側面はどうか。大人としての立場は出来上がっていない。そうした中で、若者は既成の社会や大人に鋭い批判の矢をあびせ始める。経験を持たぬ若者たちは、観念的に批判する。
そのように、しだいに社会との接点を持つなかで、若者はしだいに社会的体験を深め、真に社会の一員として参加する準備をするわけである。
いずれの側面においても思春期が「危機的である」と言える。そうした危ない橋を渡ってこそ、自我の同一性、すなわち「自分を取りまく世界の中や、広がりの中で、自分を保ちながら、なおかつ他者と密接な関連をもち、自己の統一体としての存在を確かにする」という作業が可能になるのである。
我々大人はこれらの思春期の特性をよく知り、柔軟で広やかな心を持って、若者を眺めていくべきだと思う。
表面的にくずれがあるように見えても、内面的に成熟過程をしっかりたどってきたものは、早晩自分をより確かな形で見出し、歩んでいくにちがいない。
一方、表面的には、ほころびの少ないものも、内的成熟いかんによっては危ない場合もある。つまり表面のほころびよりの程度よりも、それまでの発達過程がより重要であると考えられる。
(服部祥子:1940年生まれ、大阪大学医学部精神科医、大阪市立小児保健センター精神科医長、大阪人間科学大学教授等を経て、頌栄短期大学学長)
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