問題行動をする生徒の保護者と、どのようにすれば連携できるか
生徒指導で保護者の協力をお願いするときに、まず念頭においておくことが、保護者は自分の子どものことで、どんなに苦しんでいるかということである。担任や学校は、このことを受け止める姿勢ができていなければならない。
この点が抜けてしまい、家庭訪問などで、いきなり子どものやった問題行動の深刻さだけを強調するようなことになると、協力どころか反発さえ買いかねず、事態は悪化する。
学校が迷惑していると保護者に受け止められるようでは、その指導は失敗に終わらざるをえない。
そこで、親の協力を得る決定的な要件の一つは、教師が親の苦悩を深く理解することにある。このことの重要性がふまえられていれば、親と一緒の土俵に上がれるし、子どもの問題行動を伝える際に、行動のまずさは伝えても、子どもそのものを悪く言うことはないはずである。
生徒指導は、どんな状況でも子どもの成長を信じることで成立するものである。このことの重要性を再認識することが大切なこととなる。
担任の、子どもを何としても良くしたいという熱意が保護者に伝わったなら、間違いなく協力が得られるものである。
問題を抱える子どもの親は、あれこれ試みてうまくいかず、親子関係も険悪になっていて、何をどうすべきかわからず困り果て苦悩しているケースだってある。
だとすれば、子どもの問題を指摘するだけでは何のプラスにもならない。子どもの問題を指摘したうえで、どうすべきかをアドバイスできなくてはならないのである。そのアドバイスも、親が納得して実行に移せるものでなければ、それはかえって失望を大きくさせるだけである。
保護者に対する助言は、家庭での状況を知ると同時に保護者の心情を踏まえながら、実行可能な方策を示せるかどうかにかかっているといえる。
例えば、父親が子どものことを「情けないやつだ」といつも言っていて、子どもがやる気をなくしていた。
その父親に、子どものことをほめてくださいとお願いしたが、「ほめるところがない」とにべもなかった。
「それなら、認めたりほめたりする場面をつくり出してでもいいですから彼をほめるのです。たとえば、『牛乳を買ってきてくれるかい』とか、『手が離せないので、このはがきを出して来てくれるかい』とか。それで用事を果たしてくれたら、『ありがとう、とても助かった』とかオーバーでもいいのでほめるのです。きっといい関係が生まれてくると思いますが」
と、私が言い終わると、父親は晴れ晴れとした表情になり、「やってみます」と力強く言って帰った。
(大阪隆夫:1941年生まれ横浜市立中学校四校に勤務。「生き方を探求する会」会長として道徳教育を研究。シュタイナー教育を研究し各種学習会等で講義。ネット上の教育相談室で相談員)
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