私の話術のノウハウとは
教育には、話し方の上手さが求められていると言えよう。授業の大半は「話すこと」によって行われる。私は自分なりに話し方の技術を高めるために次ぎのように努力を続けてきた。
1 人の話し方にこだわりを持つ
うまい話し方も、へたな話し方もためになる。なぜ上手か、なぜへたかとこだわってみることによって、いろいろなものが見えてくるからである。
次のように分析し、書きとめることによって自分の話し方と比べてみることがかんじんである。よいところは取り入れ、まずいところはそうならないように努めなければならない。
(1)話題(日常的な話や体験の話なので親しみやすく真実みがある)
(2)用語(平易な言葉で分かりやすい)
(3)緩急・強弱(的を射て巧妙、適切、変化に富む)
(4)態度(謙虚かつ誠実である、聴き手を尊重している、温かい心)
(5)表情(笑い・思索・訴え・自省など、豊かな変化がある)
(6)構成(身近な例をとりあげ、深い解釈を示す)
(7)姿勢(聴き手と視線を交わしつつ話すので、聴き手の視線を外らすことがない)
(8)そのほか(発音・発声が明瞭で聞きやすい、言葉使いが正しく美しい)
このような小さなこだわりを持つことによって、話し方の腕はあげられると野口は考えている。
2 話す内容のメモ
講演でも、与えられた課題に対する内容を思いつくままに努めてメモをする。
なるべく具体的な事例を多く集めるようにする。具体例を伴わない話は抽象的で迫力がない。具体例はできれば自分の体験や見聞の中から集めるべきである。その方が自信を持って話せるからである。
3 話の構成を作る
話す内容が集まったところで、それらをグループ分けして、話の筋書きを作る。まず、話したいことを大きく三つか、四つの項目に束ねて、それにふさわしいタイトルをつけてみるのである。
それぞれの項目の中を次のように組み立てる。
(1)事例2,3(事例の適否が重要)
(2)主張点や意見(個性的で有意義な)
これらの吟味にはじゅうぶん時間をかける。なんどもさしかえたり、順序を入れかえたりしてみる。最後に「枕」と「まとめ」をつけ加える。
4 実際の話し方、話術
私は話というものは「面白くなければダメだ」と考えている。
人びとの顔が一番美しいのは楽しい時である。楽しい時には人は笑い、心は明るく解放される。楽しい講演は引きつけられる。
講演をする時に「楽しい」「面白い」ということを大きな要素として話を組み立てる。
「笑い」は一つの休憩である。くつろぎの中で心にしみるものが一つか二つ残せればそれで充分ではないかと思っている。本当にすぐれた話はくつろいでいても心に深く、長く残るものである。
野口の話し方のポイントをいくつか挙げてみる。
(1)ゆっくり語る
(2)「間」
聞き手との心の対話の時間の効用を生かす
(3)問いかける
問いかけも聞き手との対話である
(4)具体例や自分の体験をもとにして語る
(5)ユーモアを大切にする
(6)正直に話す
(7)謙虚さを大切にする
(8)自分の主張を明快にする
すこし極端でも明確に自分の考えを打ち出してみる
(9)教えてはいけない「提言」である
(9)常に「批判」歓迎する
(10)ともにそのテーマで考え合う姿勢で対すること
(11)聴衆の反応を常にとらえながら話す
(12)話を区切り、束ね、まとめる
(野口芳宏:1936年生まれ、元小学校校長、大学名誉教授、千葉県教育委員、授業道場野口塾等主宰)
| 固定リンク
「子どもの話し方」カテゴリの記事
- 子どもたちにスピーチの指導をどのようにすればよいか(2020.02.26)
- 子どもたちが、話す力・聞く力を身につけるためには、どのように指導すればよいか(2019.06.25)
- 子どもたちに「ユーモアのあるスピーチ」の指導をするには、どのようにすればよいでしょうか(2018.07.26)
- 教師が身につけておきたい、子どもたちの「話し合う力」の指導ポイントとは(2018.07.19)
「教師の話しかた」カテゴリの記事
- ふだん発している言葉が毎日の生活に影響を与えている 中井俊已(2022.01.12)
- 声が変われば自信が生まれ人生が変わる 白石謙二(2021.09.04)
- 子どもたちに印象に残るような話し方とは 大内善一(2021.06.08)
- 発声の練習(あくび卵発声トレーニング)とは 平田オリザ・蓮行(2021.05.02)
- 子どもに話をするときのコツ 大村はま(2021.03.09)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント